三筋北陸・ワインダー(糸捲き機)の専門機料店

繊維産業のウラ話に迫る、メンテナンスのお気楽日記。

メンテお気楽日記 12月28日 出目糸

2015-12-29 | メンテナンスお気楽日記
最近よく聞くのは「100㎏の加工に100㎏の原糸しか送ってこない」なんてボヤキです。

若い?商社担当とすれば、100㎏の糸で100㎏の加工糸が出来るのが当然と思っているが、
実際、仕事をすれば、不良糸と言わないまでも「加工ロス」が発生します。その為発注の際、
何本かの原糸が余分に入荷されているのが、暗黙の了解でした。

加工糸仕上がりを98㎏で納品すれば、商社は客先に納品出来ません。で、再注文の手当てです。
これが、撚糸工場にとっては大変な手間となる。5㎏の加工の為にすべての機械を再稼働させれば
「手間」なんても言ってられない。120錘の燃台に5~10本のボビン稼働も何回も見た。


加工技術が上手な撚糸屋さんでは、当然ロスは少なくなります。105㎏の加工糸が仕上がり
100㎏を納品する。残りの加工糸を、昔の人?は「出目」と呼んでいた。

あまり昔話はしたくないが、その糸を専門に買いに来るバイヤーも存在した。軍手製造や染色ネット
など、材料費を抑えなければならない業種には、まさに宝の糸だった。両方がWin・Winの商いとなる。

ところが、その商いも成り立たなくなり「出目買いさん」の噂すら聞かない。
「出目糸」はお宝どころか、溜まってしまえば「産廃」扱いの金食い虫とまで言われるのが現状。


で、今日の本題です。いかにロスを抑えるか?100㎏の糸で100㎏の加工糸を作るか?です。

気配りのある仕事?をしていても、残糸の多くは「解除残糸」として発生します。シリンダーの
内径や紙管解除の最後に5~10gの糸が残ります。5gでも200本加工すれば1㎏です。

これは、巻き径が細くなれば解除抵抗が大きくなり、それにシリンダーの鍔径、紙管の潰れなどが
影響されます。張力変化で糸が切れてしまう。対応としてバルーン距離やスピードで抑えることも
できますが、作業効率や機台スペースを考慮すれば、二の足を踏にでしまう。

「巻き糸が最後まで切れないで上がる方法はないのか?」

あります。当然昔からの課題ですから、先人は色々な対応をしてきた。それが「キャップ」です。
各シリンダーサイズに合ったモノ、チーズ紙管の内径に合ったモノ。様々な仕様が必要とされた。

ところが、今これを世話しようとすると、けっこう難しい。
まず、中古部品としてピッタリの製品探しが困難。量産時代?には一個2~300円で納品できた
製品も、今、必要ロットを注文(製作)すれば、2000円の見積もりが帰ってきます。


突然ですが、今日はここまで。ロス対応のテクニックは追々話題とします。

メンテお気楽日記 12月24日 複合撚糸の挑戦

2015-12-24 | メンテナンスお気楽日記
                     ダブルカバーリング機、一番下段の芯糸は企業秘密です。

「新素材」に「機能性」を見つければ、独占加工と販売が出来るなんて「妄想」が根強い。
しかし、新素材のフィラメントの形状を変えるなどの技は、大手製糸企業でも、極めて難しい。

そこで、中小企業でも出来ることは、糸を組み合わせたり、加工方法を変えて、新たな機能性を探っている。


一昔前は「意匠撚糸」と言って、それはそれは「手間」の掛かる加工だった。「壁撚糸」とも呼ばれ
何回も反復加燃した糸や、無燃糸を組み合わせて、機能(まだ感触・形のみ)を創り出していた。

只、組み合わせ方法は幾万(幾千?)とあり、先人の経験と知識による加工工程が伝承される域を出ない。

通常加工での不良糸?を引っ張り出して、何かオモシロイ糸は無いかと探った撚糸屋さんもいたが、
どこで、なにが、失敗加工になったのか、解らなかった!なんて笑い話もある。


現在は、加工機も多様化し、一工程で複合効果を得る事も出来る様にはなっている。トライツイスターを
始め、ダブルカバーリング機など、複合加工機を使えば、多様な糸を簡単(でもない?)に創りだすことも出来る。

素材も、綿・麻・ウールの天然素材、ポリエステルやレーヨンの合成素材。ウレタン素材を芯糸にすれば
サポーターなどの伸縮性の機能も得ることも出来る。組み合わせの可能性は、まだまだ未知の部分が多い。


只、問題は、撚糸工場は「糸を加工して」ナンボ!の世界。いくら変わった?糸を開発したとしても、
「販売」が共わなければ、独りよがりで終わってしまう。その為には、顧客ニーズの機能性を実証したり、
アパレルニーズの装飾性を提案したり、加工受注までの「山道」はまだまだ遠いし、簡単でもない。

しかし「買わなきゃ当たらぬ・」何かと一緒で、「開発」しなければ、いつまでたっても「委託加工」

巷?では「委託加工の工賃はゼッタイ上がらない」なんて事も囁かれています。
それを打開するには「自社ブランド、自社加工技術を前面に押し出す事」 とまでは、全員解ってもいる。

単に「開発」 でも、これ以上難しい課題もないのです。ニーズ把握・素材選択・加工技術・技術革新・・・
そこに、企業秘密まで入り込めば、もうメチャメチャです。相談することも躊躇される状態です。

独りよがりの糸は、所詮世に出る事はない。何人もが同じ「試験糸」を作り続けて、倉庫入り・・


そこで、提案です。「儲かる糸を開発しよう」とするから、足元が見えなくなってしまう。
足元にある糸を、ちょっと変えて「自分の好きな糸」を作ってみる。ヒントやアイデアは足元にある。
その糸が「何がどう変わったか?何が出来るか?」を考え、知る方が意外と、近道かも知れない。

見えない事に挑戦するより、出来る事の結果を、見定める方が楽しいし、技術財産にもなる。
不良糸はけっして「失敗」ではなく、次のステップの「財産」と考えるべきです。



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メンテお気楽日記 12月17日 直感観察

2015-12-17 | メンテナンスお気楽日記
                                            イメージ写真

「社長。この原糸オカシイですヨ。他とは、ちょっと細いです。」「そうかナ・・・?」

社長は「検査協会」に原糸を持ち込み、調べてもらう。結果、どう数えてもフィラメントが42本。
ポリエステル原糸なら、48・72が通常。フィラメント不足と判定された。(何年か前の海外糸)

ボビン巻き準備で、女工さんが気付いたからイイものの、撚糸して・納品して・織布してからの
クレーム原因探しになれば、大変なことになっていた。さいわい「検査結果」で商社も事なきを得た。


農産物の品質管理だってそうダ。何万個と流れてきるミカン?が、まず機械で大きさ別に選別される。
けっこうシビアに選別された良品でも、最後に待っている検査は「人間の目」です。

こんなことが、あらゆる生産現場で行われ、テレビ画面を見て「すごい人がいるもんダ」と感心する。
ところが、そのすごい人が、自分のとなりにいる事は気づかない。別に「熟練工」の域になくても
毎日の作業が、変化を感じることが出来る。問題は、それを報告できるか?の体制にもある。


今日は(も)生地の織ムラ事故の相談を受けました。
コーンアップした横糸にだけ、艶の変化が見られ、ワインダーに要因があるのではないかと言う事です。

糸の艶は、撚り数と張力が影響してきます。じゃ、張力管理が原因!とも、簡単には答えが出せない。
それこそ、作業工程を再確認して、順番に消して行きます。糸・準備・撚り・セット・コーン・織機給糸・・

コーンアップ工程ひとつをとっても、バルーン距離、テンション装置、巻きスピードで大きく変化します。
他にも要因があるが、全体的か、錘別かなどの「観察」「報告」も必要となります。

「おかしいな?何か変?」は現場でしか解りません。出荷検査での検出では後の祭りどころか「損益」です。
不良原因探しは大変な労力がいります。調べれば調べるほど、ドツボにはまり、周りが見えなくなってしまう。

そんな時、ヒントになるのが、現場からの「ちょっと変わった」との報告であったりする。


以前、海外作業員の性格?が問題にもなりました。
「自分に与えられた仕事は死守するが、他人の仕事には口出しはしない」「言われた事だけする」

ものづくりの流れ、次の作業のための作業。それを理解させることが難しかった。

いつもの事だが「機械をあつかうのは人間」「管理し、整備し、報告するのも人間」

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メンテお気楽日記 12月15日 カセ糸のコーンアップ

2015-12-14 | メンテナンスお気楽日記
綛スガ状態から、直接、コーンアップするのは「難しい」と言われています。

それは、解除時のテンションムラが、巻き玉の変形に影響したりして、均一な製品が出来ない。
何より、カセ解除時のスピードも確保出来ない為、カセ解除とコーンアップは、別工程となります。

その為、カセから四つ枠?・ガンガン・Hボビン等に巻き返し、その後ワインダーでコーンアップします。
その時は、円筒形に巻かれている為、均一テンションで高速作業が出来ます。

特に、太番手の場合は、空気密度が影響して変形になり易い。その為、糸おくりを均一にするフィード
ローラーを使ったり、デクリーズ(張力漸減)方法を使います。他にも9°15′用ドラムで3°30′
紙管に巻く、荒業をも使います。(この時は、再加工で9°15′に高速仕上げ巻きを行います。)


最近は、ボビン染色の圧縮釜が普及し、どぶ漬けのカセ染加工所も少なくなりました。
しかし、藍染めに代表される様に、少ロット生産も根強く、工房企画での需要もまだまだあります。

今、お世話している染工所は「レーヨン」のカセ染専門工場です。
ここでは、外注工場の設備はワインダーだけです。カセ輪から直接コーンアップします。
レーヨンの諸糸は、加工工程が多ければ、ケバの発生率が多くなるからです。

技術的には、けっこう?難しいらしく、作業出来る外注工場は80才オーバーの2軒だけになりました。
若手(50~60代)を紹介し、インバーター装置やスプリングテンサーで作業できる様に挑戦しましたが、
不良糸の発生に音を上げてしまう状況でした。(自社設備も立ち上げたが手が回らない・人がいない)


直接巻きのポイントは「糸を見る・見極める目」にある事は、言葉だけでは解っている。
スガ糸の裏・表、綴じ糸の後・先、カセ輪の張り具合、カセ輪の重さ等、まだまだ「コツ」はあるらしい。

「やってみなければ解らない」身体で覚え、指先で感じる。それが「経験」と言われても一長一短に
「伝承」できるモノでもない。新工場の立ち上げ。余ほどのフォローがなければ厳しい状態。


先に紹介した幡屋のばあちゃんは「私は18から幡屋の嫁だから、糸は触れば解る」「イイ仕事ありがとネ。」
こんな、好条件も珍しい。

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メンテお気楽日記 12月14日 細幅織機

2015-12-14 | メンテナンスお気楽日記
                      織機の写真は撮りそびれました。後日アップします。

リボン屋さんが廃業し、奥さんは自宅工場で、染工所の仕上げ巻きをする事になりました。

染工所とすれば、これまでは納品していた客先だから、気心も知れて、頼み安かった?
社長からは、外注工場の紹介を頼まれていたが、なかなか簡単には紹介出来ない状態が続いていた。

話は半分は済んでいるので、機械の搬入・設置の段取りをして、作業環境を整えます。

でも、一番の問題は、「人」です。いくら繊維関係でも、織機とワインダーでは機械が違います。
機械が違えば「あつかい」が違う。あつかうのは、もちろん「人間」です。

その為には、いち早く「コツ」を覚えてもらう必要がある。「機械があれば」って事では、絶対ない。
習うより・・いや「習って慣れる」のが一番。今日は、午後から系列工場での勉強会のお世話です。


話は廃工場の件、機械の処理の事です。
出入りの機料店からも「もったいない」と言われながらも、実際、引き取ってくれる処もない。

たまたま、ボビンワインダーは他店からの問い合わせがあったので、情報を流しました。
すぐに顧客と来社し、その日のうちに取引となった。おかげで?場所が少し広くなった。

問題は織機です。3台は機料店が「嫁ぎ先が見つかる」まで、預かる事になったが、残りの機台。
これが、今作ろうと思えば大変なシャットルが付いています。思わず「なんダこれ!」

細幅織物工場には、何件か出入りはしているが、大半はニードル織機。近代的?な鉄製部品です。
これが、木製の小型シャットルで各錘?ごとに半円運動をして、横糸を給糸している。

広幅織物なら、端から端へシャットルが飛ぶが、リボン、テープ等の細幅は一台の織機で何列もの
リボンを同時に織る。だから、各列ごとの横糸シャットルが必要となる。これが芸の細かい一品。

「昔の人は良く考えたものダ」興味深々。何より「木製部品」には愛着すら感じる。インテリアでもいいかな?


PS/工場にはメダルや優勝旗のリボン在庫が山積み。これも何とか使う方法はないものか?


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