三筋北陸・ワインダー(糸捲き機)の専門機料店

繊維産業のウラ話に迫る、メンテナンスのお気楽日記。

メンテお気楽日記 10月30日 推理メンテナンス(綾振り不良)

2017-10-30 | メンテナンスお気楽日記
朝一番「綾落ちがひどい状態で出ている。早急に直して欲しい」とのこと。

状態を聞けば、9°15′仕上げ巻きワインダー40錘で、15か所も綾落ちが発生しているらしい。
「糸が変わったか?」って聞けば、「同じ糸だが番手が細くなった、前の時は問題ない糸だった」

糸が細くなってスベリが悪くなるのは、ベークドラムではよくある事だが、今時?ベークドラムを使用
している機台なんて少ない。ベークドラムは同一糸・同番手仕事でこそ、ころがり効果を発揮する。

ドラムの溝角というのは、真っ平のスベスベに見えるが、実は、糸の番手太さに適応した凸凹が糸によって
形成される。これを「なれ」と言って、糸との馴染みが良くなる。糸がころがり移動するからできる現象。


ともあれ、機械を直すったって、どこを触ればイイのか?
回転スピードを落としても、糸は安定するかも知れないが、張力不足でスベリがなお一層悪くなることもある。
接圧角度にしたって、ベアリング不良にしたって、今までまとも?が、一度に不良になるとは考えられない。

それと、40錘のうち25錘は、現状条件で巻けている訳だから、その違いは「微妙な」事と考えなければ
ならない。微妙と言えば、やはり「気候条件」。糸加工には、その糸にあった「湿度条件」ってのもある。

特に、古い?工場は「天候条件」に影響されやすい。外気と工場内と同等?。低気圧なら湿度も高くなる。
他にも、油剤や、撚り数の変更など、色々の条件もあるが、今回は変更はないとの事。正に推理・推測です。


で、フッと気付いた。「クロームメッキ・ドラム」これも特徴あるドラムで、材質硬度は充分あるが、
表面が滑らかな分、糸がくっ付き易い(密着する)これを解決するのが、梨地メッキやテフロン加工である。
短繊維には有効なドラムだが、昨今の甘撚りエステルには、サラサラ加工が有効とされる。

湿度の微妙な差が、クロームメッキのすべりに影響を及ぼしていると考えた。これが40錘の内15錘か?
ならば、対応は簡単?です「シリコンスプレー」ですべり補助してやれば、結果は確認出来る。

スプレーといっても、四六時中吹きかける必要はない。一度すべり出せば、糸とドラムが馴染んでくれる。
馴染みの悪い時だけの対応で充分です。只、注意したいのは、油分配合のシリコンスプレーです。
まさか、油を糸と接触させる訳にはいかない。糸に影響のないシリコンは織物工場で使っています。

と、言う訳で、朝一番「シリコンスプレー」一本を持って、客先に走りました。

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メンテお気楽日記 10月28日 検燃器の修理

2017-10-28 | メンテナンスお気楽日記
ひさしぶりの「電動式検燃器」の修理です。仲間の機械倉庫を訪ねた際、棚の奥にひっそりと?置かれていた

尋ねたら「動かないョ」と軽い?返事。引き取っては来たが、コンセントに差し込んでもスンとも動かない?
電動検燃器でモーターが回らなければ、ただのお荷物。モーターは100V正逆転の特殊モーターが必要。


北陸の合繊は、ジョーゼットの強撚糸から始まった為、電動検燃器を使用していた撚糸屋さんが多かった。
1800TWや2400TWを検燃するには、どうしても電動方式が便利だった。

一時は、中古機整備商いも出来たが、さすがに、作っていない機器の、情報も少なくなってきた。
それ以上に 世の中の「風合い・風合い」との需要の流れに、撚糸の撚り数も少なくなって来た。

400TWや600TWの検燃では、手動式でも事足りる。今度は、ン十年前の骨董?検燃器を探して欲しい
との依頼が増えた。真鍮やクロームメッキの25センチ計測装置です。

あまりにも、それらしい姿なので「壊れててもイイ」なんて?依頼も来た。聞けば、事務所に置いてあるだけで
糸あつかいの「ハク」が付くとのことです。笑い話にもならない。


やはり、検燃は50センチ計測が、やり易いというか、正確です。1メートルの間に何回撚りが掛かっているか
計測する機器ですから、25センチなら4倍の数値、50センチなら2倍の数値で計算することになる。

電動検燃器は50センチ計測ですが、手動タイプの50センチ計測は稀少です。それだけ手回し回数が多くなる
って事かも?25センチタイプは各機料店の棚の奥?で見かける事が多い?いつかは売れるということです。
50センチタイプも見つけてはある。でも買ってはいません。需要があっての駆け引きです。


中古機相場の価格設定は、実に不思議、奇々怪々です。何百万の設備を、ン十万でお世話する事もある。
必要としなくなった機械を、必要としている人に買ってもらうのが、中古商い。まず情報も大切ですが、
それ以上に、需要予測が大きな差となる。そこに容姿や使用頻度など、色々な要因が関わって来る。

中古整備にも課題はあります。極端に言えば「新品同様」にする事も出来ます。それには交換部品に及ばず
それなり以上の手間仕事費が掛かります。当然、価格も大きく違ってくる。それでは困るとの事です?

もちろん、仕事が出来ての機械ですが、どこまでするか?見極めが難しいのが中古整備です。

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メンテお気楽日記 10月27日 伝統機械?

2017-10-27 | メンテナンスお気楽日記
何年か前、京都の知り合いからメール写真が送られて「何をドウする為の機械でしょうか?」

相当の骨董品だが、糸道ガイドがたくさん付いているので、繊維機械であることは想像できる。
しかし、撚り機でもないし、糸巻き機でもない。糊付けなどの特殊機械とも考えたが、チンプンカンプン。
(注、記事の写真ではありません。記事写真は、多分、足踏み糸紡ぎ器か糸撚り器?)

そんな事が、二度三度と続きました。廃業幡屋の2階に案内してもらった際も、木製機械らしきものは
あるのだが、どうやって動かすのか解らない。部品が足らないのか?只、紡ぎ装置であろうとは想像できた。

じいちゃん・ばあちゃんに聞いても、自分では使った事がないとの返事。
そりゃそうだろう、幡屋の旦那様といったら、鯉の泳ぐお庭付きの帳場(事務所)でソロバンを弾くのが仕事

工場に糸が入って来て、どうやって加工するかは番頭さんの仕事。只仕上がった製品の目利きだけは?超一流。
そんな時代を経て、生産性・合理性など紆余曲折あり、産業機械が開発され、景気の大波にのまれてしまった。


ここで、オモシロイ情報です。「糸に優しい木製機械?」は幡屋さんの二階に残っている可能性が多い。

と、言うのは、一階の織機や準備機械は、機料店や鉄クズ屋?さんが、きれいに整理してくれるが、
二階の木製機械はつぶしが利かない。それどころか、産廃費用や手間賃を計算すれば、大変な持ち出し。
工場の作り自体も、機械を移動できるスペースもないのが、木造工場の特徴でもある。

天井の低い二階に、大きな木製整経機(ワーパー)が鎮座ましている工場も何軒か見てきた。
どうしてビーム?を降ろすのかと思えば、床が開いてチェーンブロックで吊り下げる。最新装置?


ともあれ、伝統機械?は わざわざ資料館に行かなくても、工場の片隅でホコリを被っている状況はまだある。
只、残念なのは、糸づくり技術どころか、機器の使い方さえ、忘れされているという事です。

実際のところ、何台かの木製機械はお世話しましたが、自分自身が使い勝手や使い方も知らない。
まさか「飾り」でもないだろうが、製品の「風合いとか肌ざわり」とか言われても、これも理解できない。

先日、卓上撚糸機や丸編み試験機、靴下編み機の問い合わせを請け、老舗工場なら旧式機械が残っていないかと
会長を訪ねましたが、編み機はすべてコンピューター制御とのこと。設計ディスク一枚が50万と聞いて
なっとくして?帰りました。空調設備のきいた部屋には、パソコンがズラーッと並んでいました。

趣味の世界とは言わないまでも、伝統機械?で作る製品は、それなりの価値があり?けっこう高価です。
当然、生産性も低く、希少価値がある筈ですが、地方工場に生活に耐えうる「顧客需要」を得るのは難しい。

やはり、製品は「売れてナンボ」の世界です。ダイヤモンドも売れなければ、ただの石ころで終わる。

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メンテお気楽日記 10月26日 ベアリングの種類と特性

2017-10-26 | メンテナンスお気楽日記
機械修理依頼の何割かは、ベアリング事故です。その割合は多いと捉えた方が良い。

モーターベアリング・フランジベアリング・シャフトベアリング。シャフトベアリングの場合は、止めネジが
緩み、シャフトの方が痩せて(摩耗)いる事が多い。シャフト交換は大事になります。


昨日、何年かブリの工場を訪ねました。「久しぶりだね。顔も見たかったけど、こんなスピード稼働じゃ
機械も壊れることも無いので、三筋を呼ぶ機会もないから。」ミシン糸の後染のためのソフト巻きです。

ベアリング事故の基本原因は「高速運転」と「芯出し不良」です。

事実、スパン産地の機台はスピードが遅いので、部品の摩耗や糸道ガイドの摩耗は少ないです。もっと言えば
「昔の機械」に至っては、砲金カラーの軸受です。それでも、50年以上稼働している機台が多い。

現在、合繊のヤーンスピードは450~600m/mitで稼働している。昔の機台のスピードは測った事は
ないが、せいぜい100~200だと思う。糸にやさしいどころか、機械にもやさしい。

確かに、日本製のベアリングは信頼出来ます。国際基準以上?と言っても良い程の加工技術です。
しかし、高速回転やモーター軸受用は、それ仕様のベアリング(C3)が有り、負荷が予測される箇所には
ローラーベアリングなんてのも有ります。単にZZベアリングなら回転するという物でもありません。

心配されるのはネット購入です。最近、企業の工作室に入るとAmazonやモノタロウの箱が見受けられます。
中身は大量のベアリングです。消耗部品であることは理解できるが、目的が違えば、なお一層の消耗部品になる
事も懸念されます。その為に機料店や技術者がいる訳で、人から教えてもらう事も大切なお付き合いと考えます


もう一つの原因「芯出し」、芯が狂っていれば、負荷が集中するのは、当然ピロブロックになります。
ピロブロック自体は丈夫?ですが、シャフトが摩耗して、鉄粉が出てきます。その後は機械がブレ出します。

若い頃?前社長と機台設置の作業をしたことがあります。社長は技術者あがりで、まず自分から動く人です。
芯出し作業のさい、1㍉へのこだわりが半端なかった。納得いかなければ、0コンマ何㍉のシートで調整します

時代背景から言えば、大量生産機の時代のため、長い錘数の機械が主流。片側60錘なんてのも当たり前。
その頃の機台を分解?すると、よくピロブロックの下から調整シートが出てくる、職人にとっては芯出しこそが
技量の見せどころだったのかも知れない。その為、機械が長持ち?しているのも、事実です。

中古機整備をしていて、50年使って来た機台が、後何年使えるかと聞かれると、言葉がつまります。ン・・・

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メンテお気楽日記 10月24日 盾と矛(タテとホコ)

2017-10-24 | メンテナンスお気楽日記
昔、「どんな矛も通さない盾と、どんな盾でも貫いてしまう矛」を売っていた商人がいたそうな。

まさか、どっちかが壊れなければオカシイが、良かれと思って開発した結果が、仕事を奪うことは多々ある。

自動車産業も目を見張る開発。まず故障することがない。車検時に「パットが減ってますょ」「フィルターを
変えましょうか」ぐらい。しいて言えば、スタッドレスタイヤは何本か替えた。

この事によって、街の自動車修理工場は極端に減った。自分にとっては夢のある遊び場?だったのに。
良かれと思ってかは知らないけれど、ホームセンターやショッピングモールによって、街の商店街も歯抜け状態


他人事でもありません。ワインダーのオニ綾装置。以前はマグネットスィッチでON・OFFしていたが、
3年が寿命と言われていたので、格安のソリッドステート(無接点)を使い、組み替え販売をしました。

確かに当初は、依頼も多かったが、オムロンタイマーはそのまま使ったので売り上げはそこそこ。
普及した頃になると、リボンブレーカー修理の依頼は激減した。当然マグネットスィッチも仕入れる事もない。


例えがちょっと違うかも知れないが、繊維機械も一度作ってしまえば、けっこう?長持ちする。何年かに一度の
入れ替えなんてのも、まず無い(ちがう意味での原因もある)せいぜい消耗部品といわれる部品交換だが、これ
も何年かに一度。それでも工場が多かったので機料店も商いが出来た。ベアリングやVベルトは売れ筋。

特に、三筋ワインダーは壊れない機械と言われています。機構が単純な分、部品数も少ない。基本はドラム回転
だけなので、ベビーニットから極細合繊まで、仕事仕様によって変更できるので、あらゆる業種で使われた。

ところが、先日の50年前の機台のように「壊れない機械は売れない」50年以上も売れ続けるハズもない。
仕事が変わっても、工場が変わっても、仕様改造するだけで次の仕事ができる。中古機の使いまわしです。

価格も当然それなりの相場になりました。ワンモーターにインバーター、カウンター付きの「新機台ワインダー
」が1錘あたり60万70万と言われる中、別世界のような商いが続いています。

続けなければ、商いは成立しない。その為の努力はしています。売れない機台を、売れる機台へ。
ン十年使った機台をそのままお世話すれば「何だこりゃ」は当然です。「中古ですから・・」言い訳もできない。

それなりに認めてもらう為には、お風呂に入って髪をとかし、人前に出れる姿に・・それが中古機整備です。
はっきり言って「寂しい仕事」です。一人でコツコツ。美人は見えても、背中を流した三助の存在は見えない。

「儲かる仕事のためにワインダーが欲しい、でも高いワインダーは・・」これも矛盾とは言わないのだろうか?


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