三筋北陸・ワインダー(糸捲き機)の専門機料店

繊維産業のウラ話に迫る、メンテナンスのお気楽日記。

メンテお気楽日記 4月30日 糸撚り装置の失敗作

2018-04-29 | メンテナンスお気楽日記
何年か前に作った「糸撚り装置?」です。事の始まりは「ワインダーで合糸出来ますか?」って電話
でした。「何本かの糸を重ねて巻いている、工場は何軒かありますょ」って、返事しました。

ところが、話を聞いているうちに、糸をそのまま揃えて巻くのではなく、糸を絡めながら一本の糸を
作りたいとの要望でした。それは「合撚機」の仕事とも思いましたが、工房では無理な設備です。

「何本かの給糸紙管を縦に並べ、下段の糸を上の紙管の中を通していけば、上の糸の解除撚りで、
下からの糸に絡まって上ります。カバーリング原理と同じです。でも、けっこう調整が難しいとも
聞いています。」

単純に考えても、給糸の大きさによっても、一回転の長さも違うし、解除テンションも違う。
不均一になるのは目に見えている。だいたい、たわみやズレも発生するのも想像される。
カバーリング機の「たすき掛け加工」にも、それなりの調整が必要なのに、原理だけでは、事はならない。

その時考えたのは、回転台の上に、給糸紙管を何本か並べて、台を回転させる、単純な方法でした。

各糸ごとにテンションを取り、3~4本の糸を一本の糸として撚りを掛けます。試作機段階?では、
ウール糸とラメ糸を絡めたり、意匠撚糸糸に他糸を絡めたり、それなりのオモシロイ糸が出来ました。

ところが、課題は、巻き取り装置(ワインダー)で起こりました。三筋ワインダーの最低スピードは
50Hzでも120m/minです。撚りが掛かる前に糸を巻き込んでしまいます。回転台のスピードを上げれば
遠心力で給糸が安定しません。ワインダーにインバーター、それに撚り装置・・で、予算オーバーでお蔵入り。


回転台は、そのまま倉庫の隅で眠っていましたが、最近、倉庫を訪ねたお客から「オモシロイね」って言われ、
色気?がムラムラ。三筋ワインダーはあきらめ、その後に作りかけた、自作ワインダーを引っ張り出した。

これが実にいい加減と言うか、寄せ集め装置。まずフレームはダイソーの300円アングル、モーターは
石川シュワイダーのオイリング装置から、クレドールは片岡のカバーリング機から、ワインダーらしい?のは
0°0′ドラムだけです。でも、時間さえかければ、チーズ紙管に1㎏も巻き取ることも出来る予定?

特長はオイリング用のスピードコントロールギアモーターですから、1分間1m巻きの超低速運転が可能です。
これを仕上げて、糸撚り装置と組み合わせれば、工房さん希望の予算で提供できたかも知れない。

只、三筋北陸の弱点は、開発予算もなければ、新品部品を買うのもためらってしまう貧乏性。
目の前にあるモノや、知ってる情報を屈指して、客先仕様に答えようとします。

中古整備機は、言って見れば「寄せ集め」です。不良箇所があれば、使える部品を探します。
もう、製造中止の部品も多々あります。そんな時こそ、知恵と知識が必要とされます。


日本の成長産業は、なんも無いモノ不足からスタートしたと、おっさんは思っています。
だからこそ、知恵を絞り、失敗を糧とした「ものづくり」は、おっさんの強みでもあると考えます。

スタートボタンを押せば、機械が動くのではなく、何をどうする為にどう動く。
基礎を知らずして、機械を使いこなす事、しいては、製品づくりも難しいと考えます。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_

ブログランキングに参加しています!1日1回クリックをお願いします!!
↓↓↓↓↓↓↓↓
人気ブログランキングへ


メンテお気楽日記 4月26日 糸切れの原因(不良糸対応)

2018-04-26 | メンテナンスお気楽日記
メンテナンス依頼が、糸商社からが多くなったのは、別の話として、大半は「事故の原因探求」です。

客先から苦情(指摘)が来て、あわてて糸の加工工場に走ります。糸商は原糸を工場に送り、工場で加工
された糸は、コーンアップされ、段ボール梱包され、直接、客先に送る指示が来ます。

何本かの糸はチェックするとしても、糸の品質は工場におまかせ状態が、当然の信頼?関係でした。

ところが、委託工場は、完全な「人員不足」です。まず、女工さんが大勢いる工場の方が珍しい。
家内工業となると、これまで5~6人でしていた仕事を、家族を含め2・3人で行うという事です。

「手が回らない」なんて言ってられない、やることは同じです。糸を仕上げて、ナンボの仕事です。
原糸をボビン繰りし、燃台に糸掛けセット。上撚り・下撚りとなると作業の繰り返しです。

シリンダーに挙がった糸を撚り止め加工、それをワインダーでコーンアップします。他にも文章では書き
きれない程、作業は色々とあります。荷造りだってけっこうな仕事です。その前に「検品」もある。


以前、原糸自体のフィラメント不足を疑った女工さんもいたが、試験所に持ち込んだら、やはり「不足糸」でした。

「仕事は慣れ」です。どんな仕事でもやれば出来ると思うが、プロ仕事は回数で極める。
何かのコマーシャルに「違いのわかる・・・」とあったが、違いが解るようになれば、まあ、一人前です。

「何でも出来る」のを器用貧乏といいます。便利な存在かもしれませんが、言い換えれば「中途半端」。
いつかメッキが剝がれます。中古機械にペンキを塗る自分とも重なる気がします。

しかし、焼付塗装まですれば、客希望価格とかけ離れていく。撚糸屋さんも同じ状態と考えます。
糸繰り専門、カセ繰り専門、ワインダー専門の女工さんがいてこそのプロ仕事です。検品係も。

すべての仕事には「専門加工」ってあったはずです。技術と知識でお金を稼ぐ、そして生活が成り立った。
それが、ホームセンターや大型量販店に集約され、商店街や町工場を、しいては内職までが窮地に立つ。

「工場一括工程」聞こえはイイが、言ってみれば「中途半端」の集まりです。各部署に専門職人を雇用とは
言い切れません。工員(アルバイト?)が、学習し模索しながら、機械と向き合っています。

自分の仕事もメンテナンスだけでは食えません。時には?機械を作り、ペンキ屋さんをし、電気屋さんの
真似事までします。後は棚板作りの大工さんであったり、機械を搬送・搬入すれば、運送屋さんも。

「餅は餅屋」みんな解っている事だけど、スーパーで買っているうちに、餅屋さんは無くなってしまった。


ともあれ?前書きが長くなり過ぎになってしまったが、メンテナンスの話もします。

「糸切れ」の原因は様々ですが、「切れ口」を確認すれば、不良箇所を推定できます。
タイプとすれば、「ボケ」「チヂレ」「しごき」「引っかけ」の特徴が見ることができます。

「ボケ」は摩擦・摩耗によって起こります。切れ口フィラメントが同じ長さが特徴で、高接圧やオニ綾による
    糸のヘタリが原因です。カビやム虫食いも同じ特徴ですが、糸の切れ口が違います。

「チヂレ」は急激なテンション変化によって起こる引きちぎり事故です。フィラメンに縮れを見ることができる
     ボビン糸の食い込みや、キャップのキズによっても、引っ掛かりが起こり糸が切れます。

「しごき」はガイド等のキズで発生します。フィラメンの何本かが、しごいた様に他のフィラメントに絡まって
     います。ガイドキズも深いのが特徴で、糸が入り込んでしまうキズもありました。

「引っかけ」はフィラメントの何本かだけを引っかけてしまう小さなキズです。甘撚り糸に多く発生し、多い場合
      は「ケバ」とも呼ばれています。少ない場合でも、次加工で張力に耐えられず、切れる事がある。

他にも、カッター装置の片切れや、ノッター不良など様々ですが、それぞれの特徴があります。


最近の事故の大半は「しごき」の特徴があります。これを簡単に「消耗部品の交換」「整備不良」と捉えて
修理すれば、いいのか?原因はもっと深いところにある様にも感じます。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_

ブログランキングに参加しています!1日1回クリックをお願いします!!
↓↓↓↓↓↓↓↓
人気ブログランキングへ


メンテお気楽日記 4月20日 事故率

2018-04-21 | メンテナンスお気楽日記
「事故」は必ず起こります。どんなに注意していても、どんなに予防していても。

だからこそ、おまわりさんや消防士って職業も必要で、事故がなければ、保険業も存在しません。
起こってはいけない「原発事故」も起こってしまいました。その被害は計り知れません。

誰も、自分が事故を起こすとは思っていません。せいぜい、事故を起こさない為の注意や努力はしています。
それでも、遭遇するかも知れないという意識が、「予防」であり「保険」なのです。

予防と保険には「手間」と「経費」が必要となります。蛍光ジャンパーを着たじいちゃんばあちゃんには
頭が下がります。ガードレールや信号機設置には、それなりの予算と維持費が必要となります。
安全を機械まかせにする技術もありますが、それも、すべて経費がかかってきます。。


先に、糸づくり現場の泣き言を言わせて頂ければ、まず、機械を見守る「女工さん」がいません。
機械の糸みちガイドやベアリング等の消耗部品、工場維持費。これも生活費に消えてしまいます。

当然、事故率は高いと思います。今さら、原因をとやかく言う気はないが、いま、置かれている現実でもある。
「何とか、クレームが来なければ・・」そんな中での「ものづくり」は間違っている。瀬戸際でもある。


糸づくりの事故と言えば、まず「撚りムラ・毛羽立ち・節・そして定量(定長)」など。
すべて、別加工が必要とされます。お客様の必要な糸が、ポン!と出来るわけでは決してありません。

当然、レシコンベルトや糸道ガイド等の機台管理の経費も必要ですが、糸を滑らかにするワキシング装置や
オイリング装置、これらも装置と消耗油剤が必要です。節取り加工の装置については、はっきり言って、
30年モノです。使いこなす為には、人間の目、観察、見守りが必要と考えています。

定長装置については「5g10gの誤差」の相談が持ち込まれます。しかし、おっさん感覚?では
「必要誤差」とも考えています。100㎏の糸から250gが400本なんて、紙上計算でしかない。

「出目糸」を「産業廃棄物」と扱いざるを得ない世相にも、贅沢なれがちょっと気にかかる処だが、
「余分糸」以上に、作業ミス・汚れ等の作業ロスをどう計算しているのだろう。


「災害は忘れた頃にやって来る」とも言われています。事故も同じです。
まさか、毎日「津波」の心配している人はいないと思うけれど、「知識」は大切です。

どんな時、どうなるか?どうすれば、良いのか?知っていると知らないでは、大違いです。
今日は「技術の伝承」について、とやかく言わないが、知っているから防げる「事故」も多い。

事故は必ず起こります。それをどう回避して、いち早く発見し、どう対応するかが、事故率です。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_

ブログランキングに参加しています!1日1回クリックをお願いします!!
↓↓↓↓↓↓↓↓
人気ブログランキングへ


メンテお気楽日記 4月7日 卓上ワインダー 3社揃い踏み

2018-04-09 | メンテナンスお気楽日記
大阪から「天羽繊維機器」の卓上ワインダーが持ち込まれました。2~3錘機の多機能?ワインダーが
希望とのことでしたので、3錘機に3°30′と9°15′を組み込んだワインダーをお世話するつもりでした。

ところが、カセ染の糸をコーン巻きにしたいとの事で、9°15′紙管では直接コーンアップ出来ません。
9°15′紙管の場合は、一度3°30′に巻いたコーンを巻き返しにしてからの、二度手間になります。

いくら、多種多様な糸に対応する為に、インバーター変速装置も組み込む予定でも、カセ給糸から9°15′紙管
の場合は、テンションムラを抑えるフィードローラー等の、別装置が必要となります。

二度手間もインバーターのボリューム操作だけと説明しましたが、今度はカセ仕様も3錘欲しいとなりました。
9°15′紙管は、解除抵抗の大きい糸のみに使いたいとの事で、作業糸の何%かだそうです。


これまでも、一錘の卓上ワインダーを使用していて、3°30′紙管にコツコツと?作業していたそうです。
じゃ、卓上ワインダーを9°15′に改造して、高速作業(巻き返しのみ)とすれば、かせ巻き3錘と同調できる。

そんな話があり、卓上ワインダーが持ち込まれました。これが、相当古い。40798この№をどう読めば?
まさか昭和40年7月と理解するのか?ネジもマイナス、インチネジ。落としたら代わりが無い。

ドラムを9°15′用と交換し、クレドールも9°15紙管用と交換。後は整備と調整、これがけっこう手間だった。
三筋の強み?は、中古部品がそこいらに転がって?いる事です。もし新品なら、ドラムだけでも1万ン千円。
寄せ集めと言われても、仕事が出来れば良い。新品部品でのモノづくりならば、誰でもできる。テヵ。


ともあれ、整備が終わり、倉庫には3台の「卓上ワインダー」が並ぶ事になりました。天羽はすぐに納品となっても
圓井と三筋は、まだお話止まりばかりです。デフレ世代?には、(新品)機械を購入した経験がなく、中古価格しか
知りません。例えば「卓上撚糸器」が新品価格で40ン万円と言うと「エー!」で、話が終わってしまいます。

ン千万円のダブルツィスター機が百万単位で取引される。これが繊維機械の中古市場です。
これをオカシイと思わない世相が、オカシイのかも知れません。デフレを抜け出すのは、簡単ではない。

ちなみに、卓上ワインダーの整備機価格は、5万です。これを高いと見るのか?安いと見るのか?
「安過ぎる!」と言われながら商いをしています。しかし、アドバイスをくれる人も、自分の時には値切ってきます。


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_

ブログランキングに参加しています!1日1回クリックをお願いします!!
↓↓↓↓↓↓↓↓
人気ブログランキングへ


メンテお気楽日記 4月6日 残糸処理装置

2018-04-07 | メンテナンスお気楽日記
「定長装置」の相談や問い合わせは、相変わらず多いが、ピッタリ重量の揃う装置はなかなかありません。

全錘駆動の場合は、接圧や紙管ベアリングのバラ付きによって、0、何%の誤差は発生します。
単錘計測器の場合でも、最近はリール不良による誤差が目立つ。要は、いかに観察して、いち早く不良箇所を
見つけるか?と言う事です。

一番信頼の出来る?装置は、デジタル計りの給糸糸を乗せ、何g減れば、信号を送り、機台を停止する装置です。
特に、デニールの少ない合繊関係で見ることが出来ますが、1錘10万以上の設備費となると、腰が引けてしまう。


そもそも、「定長装置」が取り座されたのは、「産廃処理」の対応問題からです。
もっと言えば、軍手屋さん等に納品していた「残糸バイヤー」や「中古紙管バイヤー」がいなくなったのが大きい

紙管に残糸が残るのは、当然の流れでした。特に、縦糸の場合、何百本の整経機の一本でも、短い糸玉があれば、
糸を繋ぐ?事になります。その為、幡屋さんや整経屋さんには、糸が残ったままの紙管がゴッソリと。

以前は、それを商いとしていた業者もいて、多少なりとも、おこづかいにもなったが、今は産廃処理費として
持ち出しになってしまう。それだけではなく、糸と紙が混ざっていれば、焼却処理の出来ないとの事です。


企業では、カセ揚げ機を改造したり、特注機として色々の方法で分別処理しているが、困っているのは中小企業
です。笑い話にもならないが、扇風機の羽を取り外して対応している工場も見たことがある。

まず、スペースがないこと自体が問題です。いくら中古カセ揚げ機があったとしても、場所がありません。
鉄工所にそれなりのモノを作って貰おうと思っても。モーター・プーリー・設計・施工等で軽く10万強。


そんな相談が以前からもあったが、その時作ってあげたのは、三筋ワインダーを使った「カセ巻き装置」です。
ワインダーのドラムシャフト部分にカセ羽を付けただけの装置です。段ボール箱にまとめた残糸紙管から、一度に
カセ羽に巻き付けます。糸は糸、紙管は紙管として、簡単に分別出来ます。

材料は、倉庫に転がっている?フレームやアングルです。モーターも当然?中古仕様ですから、鉄工所発注の1/4
と言わないまでも、タイマーやインバーター変速装置の希望でも、半額以下の予算となります。
サイズ希望も、工場の作業料に応じて、フレームの間隔と、羽のサイズで対応できます。


たまに作っていれば、問題はいっさいないのだが、先月から倉庫を訪れたお客さん3組から興味を示された。
「作って欲しい」と言われても、一度に4~5台の材料は揃わない。肝心の羽も現在は2組しかない。
材料が揃えば、作ってあげたいが、新品部品を使う気はサラサラない。それが三筋と言われれば、納得している?

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_

ブログランキングに参加しています!1日1回クリックをお願いします!!
↓↓↓↓↓↓↓↓
人気ブログランキングへ