迷宮映画館

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羅生門

2009年05月09日 | ら行 日本映画
羅生門形式と呼ばれる映画の本家本元。ひとつの物語が、語る人によってさまざまな物語に変化してしまうという方式だ。

雨がいつまでも止みそうにない。杣売りと坊主の二人の男が、半ば朽ち果てた羅生門の中で、雨宿りをしているが、どちらも表情は暗い。釈然といかないような顔で、降りしきる雨を見ている。

そこに一人の男が雨宿りに加わる。合点のいかない二人の様子を見て、雨宿りの時間つぶしに、二人の納得のいかない話を聞くことにした。

杣売りは薪を集めに山に入ったとき、市女傘と烏帽子、そして縄を見つけ、男の死体を見つける。仰天して、役所に知らせるが、ほどなくして下手人が見つかる。

都を騒がせていた盗賊の多襄丸が捕まる。なぜ、男を殺したのか・・・。殺された男の妻を辱めた後、夫を殺してくれと頼まれ殺したいい放つ多襄丸。

妻の言い分は違う。夫のさげすむような眼に耐えきれなかった妻は、自分を殺すように夫に頼むが、気を失い、気づいた時には夫は死んでいたという。

巫女を通して死んだ男の言い分はまた違う。辱めを受けた後、心変わりした妻の様子を見て、絶望した夫は自害したという。

双方の言い分は、それぞれ自分の都合のいいような話しぶりだ。どれが一体真実なのか。真実を見ていた男がいた。それこそが、最初に死体を見つけた杣売りだった。

彼が見たのは、どれも違うお粗末な顛末だった。その話を聞いた雨宿りの男は笑い飛ばす。どれが本当なんか、どうでもいい。人間など、自分さえよければいいと思っている生き物だ。

人の生きざま、死んでまでも体裁を気にするのか、自分が可愛い・・・。そんな浅はかさを見事に描いた作品だが、こういう役させると、見事にぴったりの三船さん。久しぶりに見たが、やはりはまる。まだ若く、ぎらぎらした雰囲気がよくでてる。

ほかは、いつもの黒沢組の俳優が勢ぞろいだが、千秋実氏が、ずいぶんとスマートで、洒落た坊主に見えた。いいわあ。

久しぶりに見たが、普遍的な物語は何にでも通じるものがあったことを再認識した。

『羅生門 デジタルリマスター版』

監督 黒澤明
出演 三船敏郎 京マチ子 志村喬 森雅之 千秋実 上田吉二郎 本間文子 加東大介


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4 コメント

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おじゃまします (ピロEK)
2010-05-23 21:48:33
おじゃまします。
こちらのブログを遡って読ませていただいていたら、こちらの映画も見つけたのでトラバさせていただいた次第です。特に深い意味はありません
私がTV放送(衛星放送)で観たのがデジタルリマスター版かどうかは分からないのですが、映像はキレイ。音質(特に台詞)は聞き取りづらいという感じでした。どうなんでしょうねぇ?
私が子供の頃既に壮年期以降だった三船敏郎しか知らなかったのですが、若い頃のこの方はカッコイイですねぇ。現代でもイケメンで通用するんじゃないでしょうか。
では、また来させていただきます。今後とも宜しくお願いいたします。
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>ピロEKさま (sakurai)
2010-05-25 08:13:35
地味に上映されたんですよ。
人もあんまり入ってなかったのですが、リマスター版で、とってもきれいでした。
黒沢の映画って、台詞がどれも聞き取りにくいんですよね。ぜひ、字幕を付けていただきたい!と、常々思ってました。
三船さんは、オーラびんびんですからね。
スクリーンに出た瞬間、「スター!」って思えるのは、この人くらいなんじゃないでしょうかね。
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裁判 (間諜X72)
2015-06-30 19:20:21
それぞれ言い分がある。どれが真実なのか?それがわからない。古今東西、そう言うものでしょう。

>黒沢の映画って、台詞がどれも聞き取りにくいんですよね。

全く同感です!「七人の侍」も同じです。小学生の頃、テレビで見ました。菊千代(三船敏郎)が子供達に「ビュースクリームー!ビュースクリームー!」と言う。意味がわからなかったそれから随分年月が流れて字幕付のDVDを見る。「飯、食わせてくうれー!飯、食わせてくれー!」そうだったのか・・・。長年の謎が解けました。

>千秋実氏が、ずいぶんとスマートで、洒落た坊主に見えた。いいわあ。

「七人の侍」では、一番弱そうな侍。しかし、私生活での千秋実氏。若い頃、全国大会でも上位の陸上競技の選手。そして七人の中では一番の長生き。そう言うものです・・・。

>翌年の新入社員は女子社員だけでも5人いました

いつの時代に生まれるか?大きな違いです。

>子供の頃の夕飯は未だに覚えているのですから
幼少期の記憶って凄いモノですよね

同感です。僕も他愛もない事を覚えています。

>当時のガソリンは1リットルが85円でした

これもまた驚き
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>間諜X72さま (sakurai)
2015-07-15 14:22:41
第三者の目ですら、本当かどうかわからない。
つくづく人間というもんは、自己中な生き物なのでしょうね。
その表し方たるや、さすが黒沢映画っす。
なんだかんだ言いつつ、やっぱ黒沢ですね。
若い頃の作品は、マジに素晴らしい!圧倒されます。
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