迷宮映画館

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金色の嘘

2002年07月15日 | か行 外国映画
20世紀初頭、貴族社会の退廃的な最後の余韻が残る中、徐々に台頭してくる新興国アメリカ、その人間模様と、対比等々、もうぞくぞくしてくるくらいの映画がこれだ。例によって公開からずいぶん日が経ってしまい、すでにビデオも出ているようだが、この圧倒的な映像はぜひ映画館で見ることをおすすめする。

恋人同士であったイタリアの没落貴族アメリーゴと、才色兼備のアメリカ女性シャーロットはそれぞれの貧しさから別れざるをえなかった。シャーロットは傷心からドイツに・・。アメリーゴはアメリカで初の億万長者と言われたヴァーヴァー氏の娘と結婚することになり、何とかその面目を保てるということになった。アメリーゴの祖先は嘘かホントかアメリカを発見したという冒険家。よって代々、当主はその名を受け継ぐという、ということはアメリゴ・ヴェスプッチかよ!!欧米人というのは時として、先祖にすごい人が登場してくるからビックリ。かつて、うちの学校に来ていたアメリカ人の祖先はなんと、メイフラワー号に乗っていた人だとか。

実はヴァーヴァー氏の娘、マギーとシャーロットは幼馴染。結婚式をまえにシャーロットがお祝いにと突然やってきた。アメリーゴはすでに踏ん切りをつけていたが、シャーロットはいまだに未練たらたら。結婚を前にどうしても二人きりでいたいと、お祝いの品を買うという口実で出かけるのだった。ここに登場するアンティークがいい。重厚でいかにも慇懃で、店主なんか21世紀の人物とは到底思えないような役者だ。そこで見つけたのが「The Golden Bowl」、すなわち金色の盃。見た目はゴージャスで時代がかっていて完璧なのだが、実はひびが入っている。

マギーとアメリーゴは幸せな結婚生活を送っているように見える。ヴァーヴァー氏はシャーロットにプロポーズをし、2組の夫婦が誕生する。しかし、マギー父娘はあまりに深い絆で結ばれており、しっくり入り込めないお互いの配偶者。いつしか不倫の道をたどっていく二人がいた。どうやら二人の怪しい中に気づいたマギーなのだが、確信が持てない。ある日、父の誕生日の祝いの品を選びにあの古美術商の店に行くことになる。そして見つけたのがあの「The Golden Bowl」。これがマギーに決定的な事実を知らせてくれることになる。5年前からお取りおきこの品をみつくろった二人こそ、アメリーゴとシャーロットで、二人は知らぬ中だと知らされていたマギーは、二人は旧知の中だったということを知らされるのだった。この4人の運命は。

いい、もういい。何のために映画を見るのかというと、こういう作品を見るためだ。アクションなどそっちのけのはらはらどきどき。人間模様とセリフと表情だけでものすごい活劇を見せてくれる。複雑な人間関係をぴたっとおさめる手法に感心しながら、それぞれのキャラクターに見事にはまっている役者たち。素晴らしい。美と退廃と知性と女のおろかさを見事に演じたユマ・サーマンにいいとこ独り占めのベッキンセール。イノセントのように見せて、強さを見せつけていた。「なんだ、うまかったのね」と思いながら、でる映画によっていかに評価が変わるかということも痛感した。

一番はニック・ノルティだろう。どうしても48時間のイメージを払拭できないのだが、うまかった。労働者階級から億万長者に、アメリカの成功者。何かを故郷に還元したいのだという当時の新興の人物をいやみなく演じていた。

手前味噌だが、当HPで邦題のつけ方の下手さを皆様にいろいろとお尋ねしている。これがさすがで面白いのがたくさんあるのだが、ちょっと日本の配給会社に考えて欲しいものもある。しかし、これはうまかった。嘘がこの映画の最大のキーポイントだ。嘘で塗り固められた世界、嘘も方便、嘘が人を救ったり、これには拍手を送る。

どちらかというと昔の愛にしがみついているのは一般的に男の方が多いのでは・・。シャーロットがいつまでも元彼に執着しているのは、そうかなあと思いつつもやはり最後に勝利するのは女か。世の中に適応して強く生きていくのは女よ、とますます思ったものである。

「金色の嘘」

原題 「The Golden Bowl」 
監督 ジェームス・アイヴォリー
出演 ユマ・サーマン ニック・ノルティ ケイト・ベッキンセール 2000年


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