迷宮映画館

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モロ・ノ・ブラジル

2004年06月17日 | ドキュメンタリー映画
ブラジルを人は人種のるつぼという。るつぼとは本当に混ざり合ったもの。アメリカは人種のモザイクといわれる。たくさんのいろんな人種がすんでいることはいるが、混ざり合っていない。色分け出来てしまう。ブラジルの混沌さ、なんともいえないエネルギッシュな様子はそこからもきているのだろか。

原住民が歌って踊る音楽。それは神との対話。神を信じ、神を身近に感じる事ができるものが音楽。自分たちの民族としての生きている証が音楽なのだという。そこまで言い切れる自分たちのものがあるということに、無性にうらやましさを感じる。歌うこと、踊る事はごくごく自然のことだという。どんなに稚拙な楽器でもそれは人の根源を搾り出している。太鼓を叩く音一つとっても、習った踊り一つでも、そこにはあふれる情熱と自由の魂を感じる。

そこから始まって、さまざまなところに市井の、無名の音楽家たちを訪ねていく。それは仕立て屋だったり、元ホームレスだったり、バックバンドの一員だったり、それこそブラジルを象徴するようなごちゃごちゃの人々だ。もう題名が示すとおり、『モロ・ノ・ブラジル=私はブラジルに住んでいる』だ。

音楽の技術がとびぬけて素晴らしいものではなく、有名人のスターがでるわけでもなく、「シティ・オブ・ゴッド」に出てきたようなきちゃない街角で歌うブラジルの人々。サンバあり、ボサノバあり、ファンキーあり。何でも許せる、なんでもあり、なんでもOK。そしてこの貧しい街にいて、歌うのが自分の役目だといった最後の歌手。麻薬や犯罪に手を染めないでも生きていける事を示したいと言った。その気持ちはものすごくわかるが、そういわなければならない現実も片一方にある。

極彩色の衣装に包んで、とにかく踊って歌う彼ら。彼らをこうさせたものはなんだったんだろうと考えながら、最後の「モロ・ノ・ブラジル」を聞いた。ただ、このドキュメンタリーはまだ終わっていないような気がした。きっと監督のライフ・ワークのようになっていくのだろう。

『モロ・ノ・ブラジル』

監督・脚本 ミカ・カウリスマキ 
出演 セウ・ジョルジ ワウテル・アウファイアッチ 2002年 ドイツ・フィンランド・ブラジル作品


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