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インビクタス 負けざる者たち

2010年02月05日 | あ行 外国映画
びっくりするくらいのまっすぐで、正統派の事実のスポ根もの!ということで、イーストウッドの意外な一面も見れたような一本でした。

さて、言わずと知れたネルソン・マンデラ。彼が長いこと、刑務所に入り、テロリスト扱いされてきて、白人からは悪魔のように思われていた30年。

長きにわたったアパルトヘイト政策に対して、世界からの批判、経済制裁等を経て、1990年2月11日、彼は釈放されるのだが、その辺の詳しい流れを知りたい方は、「マンデラの名もなき看守」をご覧になると、よーく分かる。

アパルトヘイト時代の、とんでもの状況などは、「遠い夜明け」や「サラフィナ!」などがよく出来てる。ぜひ、ご高覧を。

マンデラが釈放されて、道を走っている様子から始まるが、これで対比が見事にわかるのがさすが。整備されたきれいなグランドで、ラグビーをやってる白人の苦々しい様子と、「マンデラって誰?」といった雰囲気。

片や、でこぼこの汚い野原で、サッカーに興じる黒人たちの歓喜の声。この風景だけで、わかってしまうのがうまい。

そして彼は4年後、大統領に選出されるが、報復人事など一切なし。自分を30年近く牢獄に閉じ込めていた人々を、恨むどころから、赦して、手を取り合っていこうと語りかける。はっきり言って、並みの人間にはできない。彼だからこそできたことなのだが、問題はそこだ。

人格高潔で、非の打ちどころがなく、みんなをぐいぐい引っ張ることができる人。「いやー、彼のようにはできない」とか、「彼だからこそできたんだ。私にはできない」・・・・。と言ってしまい、自分たちにだってできることをやらずにしまってはいないか。マンデラに押しつけてしまってはいないか。

南アのことだけではない。ここ自分たちが暮らしているところで構わない。まっすぐな当たり前のことをし、恨みを抱かず、少々寛大な心を持つ。それができたら世の中変わりそうな気がするのだが。もとい、できたらではない。一人の人間がやれたんだから、私らにだって、できないはずがない。そんなことを思いながら見ていた。

また、マンデラの口からでる言葉が素晴らしいものばかりなのだが、そんなことをさらっと言えるのは、モーガン・フリーマンならでは。

モーガン・フリーマンがほれ込んで、作り上げた作品。いまや、前世紀の遺物となったアパルトヘイトは、それ自体はなくなったが、なぜにそのような悪行が普通になされたのか、その影響は、いまだにアフリカに暗雲を立ち込めさせている。

イーストウッドが作るということで、認知度はぐぐっと上がる。ぜひ多くの人に知ってもらいたいことをモーガンは、いい人を使った。立ってるものは、なんでも使えだ。

へーーと思ったのが、【ラグビーは、紳士がたたかう暴力的なスポーツ。サッカーは、暴力ものがたたかう紳士的なスポーツ】と。うーん、なるほど。あんだけの体を作ったマットに拍手。

◎◎◎◎

「インビクタス 負けざる者たち」

監督 クリント・イーストウッド
出演 モーガン・フリーマン マット・デイモン


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26 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
同感です! (オリーブリー)
2010-02-07 11:53:20
sakuraiさん、こんにちは。

私もマンデラ氏の言葉にイチイチ感動です。
もしかして経験者なら解るかも知れませんが(笑)
些細な日常で起こることも、根に持つより許し、過去の事と割り切るのが、自分の未来が明るく穏やかなんですよね。

>ラグビーは、紳士がたたかう暴力的なスポーツ。サッカーは、暴力ものがたたかう紳士的なスポーツ

そうそう、これ上手い喩えでしたね。
マットは身体使う役が良いわ!
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そうですね (miyu)
2010-02-07 15:22:55
マンデラだけでなく南アの黒人たちが出来たのだから、
世界の人々が今度は南アを見習うべきなのでしょうね。
世界の恥だったアパルトヘイト、
でもそれを乗り越えたら、世界に誇れる国になるんですもんね。
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その通りです (KLY)
2010-02-07 19:50:24
マンデラ大統領の優れたところはそこですよね。「私なんかが」と思う人々を結集させた文字通りの指導者でした。タクトを振るというのはこういうことを言うんでしょうね。当然自らも率先して実行するということで。
日本は名誉白人扱いをされてきました、特に同じ有色人種でありながら、アジアを低く見る傾向は未だにあります。日本人こそ見るべきだと思いました。
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モーガンとマットのノミネートもうれしい (風子)
2010-02-08 19:58:11
映画のおかげで、広く知ってもらえるといいナと思います。
一般人のひとりひとりの思いが結集すると、力になるのですよね。
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感動しました (マリー)
2010-02-08 20:49:19
こんばんは~~。

本当にまっすぐ直球な映画でしたね。
ひねりも何もなく、実話に基づいた・・・
本物の重みを感じました。
『マンデラの名もなき看守』が観たくなりました(未見なんですぅ)

私も
>ラグビーは、紳士がたたかう暴力的なスポーツ。サッカーは、暴力ものがたたかう紳士的なスポーツ
に、へぇ~って思いました。なるほど!ですよね~。

“赦し”心が狭い私には絶対無理かも~と情けない思いがしました・・・汗
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>オリーブリーさま (sakurai)
2010-02-09 08:06:54
>マンデラ氏の言葉にイチイチ感動です。
そうなんですよ。
思わず、メモしてました。
いい言葉の連続でした。
実際は、誰が目もしてたんだろ?なんて疑問を抱いたりして。

人間ってのは、もともとがばらばらな生き物ですから、それを一つにする!っていう方が摂理にあわないのかも。でも、それを一つにする一番簡単で、わかりやすいのは、スポーツなんでしょうね。
そんなことを考えながらこぶしに力を込めて見てました。

マットの肉体改造には、いつも感服ですわ。
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>miyuさま (sakurai)
2010-02-09 08:11:36
世界に誇れる国になってるかというと、そこの部分には、きっとマンデラさんは忸怩たる思いをしているかもですね。
今の南アを見ると、マンデラが目指した国とは、ちょっと違った方向に行ってますから・・・。
つくづく、人間ってのはエゴの生き物ですが、少しでいいから、マンデラのような心持になりたいもんです。
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>KLYさま (sakurai)
2010-02-09 08:14:23
ガンディーといい、キング牧師といい、マンデラといい、こういう人の行動を見ると、ものすごく勇気があって、揺るがない意志を感じますが、誰でも心の持ちようでできるんだ・・・ということを教えられたような気がします。
心したいと思います。
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sakuraiさんへ・・・。 (mezzotint)
2010-02-09 11:35:21
TB&コメントありがとうございます。
イーストウッド監督作品としてはシンプルで
ストレートな作品でしたね。多分この手の
ものって結構難しいと思うのですが。
さすが監督、上手いなあと思いました。
私はどちらかと言えばもっと癖のある作品の
方が好きですが(笑)
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>風子さま (sakurai)
2010-02-09 15:23:39
まず始まりは、知ることですからね。
でもって、知は力なり!と言うことで。
なんとか世の中、よくなってもらいたい!その一言です。
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