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ヘヴンズストーリー

2011年01月06日 | は行 日本映画
4時間半を超える長尺の映画。いまどきなかなかここまでの大作を作るのは、勇気のいることだと思うが、まずその姿勢に拍手。いままでかなりの長い映画も見てきたが、5本の指には入りそう。

物語は9つにわかれている。それぞれ章題がついて、別個の話なのだが、徐々にそれらが相まって来て、壮大な一つの話になって行く。基本は人間の心の闇、心の片隅に巣くう鬼が人の覆って行くさまが描かれる。

冒頭、仲睦まじい親子4人の姿が写されるが、次女のサトを除いて夫婦と姉が殺されてしまう。祖父と暮らすことになるサトは、大事な家族を殺された犯人が自ら命を絶ったことを知る。自分の仇はもういない。しかし、ちょうど同じ頃、未成年の少年から、妻と子供を殺された男・トモキが訴える。死刑にならなかった少年を殺す!と。

サトは、心に何かを刻む。自分が殺すべき相手はいないが、あの遺された男は絶対に自分の思いを代弁してくれるはず・・。

次の物語。交番に押し入った男をもみ合いの結果殺してしまった警官。妻はいない。息子と二人で暮らしているが、副業で復讐代行業をしている。今日の仕事は閉鎖された炭鉱の町に逃げ込んだ男。そいつを始末して、その男が作った雪だるまを息子に土産として持ち帰る。

トモキは鍵屋をしていた。ある日、鍵を開けに行ったアパートで、女性と知り合う。バンドをしているというタエは、自分の才能が発揮できないことに苛立っていた。男は浮気をしているし、とんといいことがない。トモキに自分を感動させろ!と迫る。自分のことしか頭にないタエを戒めるトモキ。

ある船着き場に女の子が降りたつ。成長したサトだった。そこにいた少年に自転車を借りて、ある住所に行こうとする。少年は警官の息子・ハルキだった。行った先はトモキの家。サトは、彼を崇めていた。きっと自分の気持ちを代弁して、刑務所から出てきた少年に復讐を行うはず・・・。

タエと再婚して、子供もいて、ささやかな幸せの中で暮らしていたトモキは愕然とする。少年が刑務所を出てきていたのも知らず、復讐の思いもいつのまにか消していた。サトは彼に復讐をするべきと迫る。トモキが言う言葉が重い。「家族を殺されたものは幸せになってはいけないのか・・・?」

独特な人形を作る女性がいた。恭子。一人で暮らしている。物忘れがひどくなり若年性アルツハイマーの診断を受ける。進行を遅らせることはできるが、病気を治すことはできない。自分には未来がない。そんなときに無期懲役の判決を受けた少年の言葉を聞く。「自分のことをこれから生まれてくる子供にも知ってもらいたい・・・」

なぜかその言葉に惹かれた恭子は、少年に手紙を出す。取り留めないことしたためた手紙を送り続ける。かたくなだった少年はいつか恭子に心を開き、養子縁組をする。刑務所から出た少年は、もう少年ではない。ミツオ。仕事などない。徐々に病状が悪化する恭子の面倒を見ながら日雇いの仕事をする。

二人の暮らしは打算なのか?それとも新しい家族の構築なのか?誰にもわからない・・。トモキはミツオに会って、「謝れ!」と迫る。謝れば罪は消えるのか。やったことはなくなるのか・・・?復讐を誓うトモキと、それをあおるサト。ミツオは新しい自分を望むが、それを望んではならないのか。その思いが交錯する。

徐々に絡み合ってくる話は、それぞれがどこかで関係してくるが、複雑ではない。それなりにわかりやすい。自分にとっては些細なことから犯してしまった罪。罪は果たして償えるのか。罪が消えることはあるのか・・?
刑務所に数年入っただけで、それが帳消しなることはない。罪を背負いながら、そこからどうやって生きていくかが償いになるのだが、思いに時効や、懲役何年という定めはない。心にしみついた思いや憎しみは、どうしようもない。それと折り合いをつけて人間は生きていかねばならないのだが、その苦しみたるや・・・。

そんな思いが4時間半に凝縮されていたように思う。

章題は

第1章・夏空とオシッコ
第2章・桜と雪だるま
第3章・雨粒とRock
第4章・船とチャリとセミのぬけ殻
第5章・おち葉と人形
第6章・クリスマス☆プレゼント
第7章・空にいちばん近い町1 復讐
第8章・空にいちばん近い町2 復讐の復讐は何?
第9章・ヘヴンズ ストーリー

通して見て、胸の奥底をかきむしられたとか、超感動作・・というもんではない。憎しみの連鎖にあえぐ人間の醜さみたいなもんがあふれてる。それがよく見る日常であることが空恐ろしいが、演じる方が少々直情的だあったのが逆に白けてしまった。白ける・・なんて久しぶりに使ったが、ものすごい熱演ではなく、力入りすぎ。。。わんわんそっちに泣かれると、こっちは一歩引いてしまう。

手持ちのカメラの揺れも、迫る!よりは、じっくり落ち着いて見たい・・という風に感じてしまった。作り手の思いは十二分に伝わったが、高額で、見るのに勇気と物理的なものが必要な映画では、高飛車な感じがする。普通に、十分多くに人の目に触れる形で作れたんではないかと思うのだ。

最後の場面は、この辺がロケ地になり、少々幻想的な絵を添えていたが、雪の風景がいきなり秋の風景となり、すとんと落ちない。なんでそんな半端な最後にしたのか、なんだか残念だった。

◎◎◎○

「ヘヴンズストーリー」

監督 瀬々敬久
出演 寉岡萌希 長谷川朝晴 忍成修吾 村上淳 山崎ハコ 菜葉菜 栗原堅一 江口のりこ 大島葉子 吹越満 片岡礼子 嶋田久作 菅田俊 光石研 津田寛治 根岸季衣 渡辺真起子 長澤奈央 本多叶奈 佐藤浩市 柄本明

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2 コメント

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こんばんは (KLY)
2011-01-08 01:41:55
犯罪被害者の気持ちって難しいです。
個人的には光市母子殺害事件がベースとなっている時点でかなり思い入れが強いんですけども。再生を許さずに、何が何でも復讐の輪廻に引きずり込むという流れは、ある意味感情的に「私が殺してやります」というより恐ろしかったです。無間地獄ですよ…。

監督は舞台挨拶で積み重ねて入ったらこの長さになってしまったと仰ってました。切れなかったとも。元々はあと20分ぐらい短かったんですって。一人一人凄く丁寧に描いてましたし、そこに監督のこだわりは感じることが出来ましたけども、心のどこかに「切れないのはどの監督も同じで、そこをコンパクトにするのも監督の手腕じゃないの?」なんて思う自分がいたのも事実です。
>KLYさま (sakurai)
2011-01-08 16:23:03
「君はなぜ絶望と戦えたか」とか見ても、並大抵な覚悟では、生きて行ってはいけない・・ような思いにさせられるのが、被害者家族に見えました。
加害者には、それほどまでも大きなものがったわけではないのに、つい・・という衝動が、どれほどの人の人生を狂わせていくのか!
そのことを痛感しました。
罪を憎んで人を憎まず・・が出来ればいいのでしょうが、人間そんな高尚な生き物じゃないですからね。
とにかくいろんなことを考えさせられましたが、多くの人に見せる使命を感じるのなら、もうちょっと物理的に見やすいものにしてもらいたかったです。

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 少なくとも、こんな作品が製作され、公開され、評価され、あまつさえヒットしている