迷宮映画館

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ホタル

2001年06月04日 | は行 日本映画
特攻隊の生き残り、「生き残り」という表現になってしまうが、特攻隊の場合はまさにそうだろう。私事ながら、私の中学の時の担任がそれだった。「戦争がもう少しのびていたら、自分はいないはずだ。」といっていたが、彼の先生は多くを語りたがらなかった。多感な中学時代、人の話をまっすぐ聞くことのできなかった私はそんな話を斜めに聞いていた。今、つくづく悔しい。なぜ、まっすぐに聞かなかったのか、先生の慟哭をなぜ聞こうとしなかったのか。今、聞きたい。先生はお元気だろうか。この映画で一番私に思い出させたのはそのことだった。

昭和が終わろうとしているとき、百人百様でその終焉を迎えていた。海の上で妻と迎えるものもいれば、八甲田の雪の中で迎えるものもいた。自分の昭和はいったいなんだっただろうと考えないわけにはいかない。話は生き残ってしまった夫婦の、今は平和な生活が中心になって進んでいく。命の尊厳さや若くして散っていった彼らの無念さを一番に伝えたかったと思うのだが、その夫婦愛に焦点が絞られているので、感傷的過ぎるとか、テーマがはっきり見えないなどの批判があるのだと思う。でも日本の馬鹿さ加減も、潔さも、酸いも甘いもひっくるめて特攻隊ほど感傷的なものもないだろう。あれは、あれでいいんじゃないですかね。特攻隊を見送る食堂のおばちゃんをしていた、ほとばしるような慟哭が圧巻だった。

劇場に入った瞬間、いつもとまるで違う匂い。ずらっと並んだ、おじいちゃん、おばあちゃん方。彼らをして映画館に足を運ばせるのは、やはりこういう話かと、でもどうあれ、映画館に足を運ばせたのは価値がある。

最近、身近な人が亡くなったり、またぞろ命を軽視するような事件が続発している。命の重さというものを考えるのにはいいと思う。

「ホタル」

監督 降旗 康男  
出演 高倉 健  田中裕子  奈良岡朋子 2001年 日本作品





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