迷宮映画館

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阿弥陀堂だより

2002年10月10日 | あ行 日本映画
俗にいうパニック障害にかかってしまったエリート医師。いろいろなストレスにさらされてしまった結果だが、すべてを捨てて、信州の奥深い山里に夫とともに移り住むことになった。無医村のそこには願ってもない人物であり、村をあげての歓迎となる。

春の芽吹きの季節から始まって、田植え、山里の段々田では機械も入れられないため、手植えだ。花摘みをし、カジカ蛙の鳴き声を聞く。清流で岩魚を釣って、炉端で焼く。縁側を開け放って、眼前に萌えいずる紅葉の中で死ぬ。息せき切って、毎日の雑務に追われ、ため息ついて暮らしている我々から見ると、なんと贅沢な暮らしか。しかし、その生活はそこにすんでいる人には何ら贅沢でもなく、ただの日常のはずだ。のんびりもいいなあなどと思う自分は、やはり、今に流されて生きているのだろうか。

久々登場の樋口可南子、やっぱりこの人はきれいだ。もっと出てくれ。旦那役の寺尾聰。最近、ますます父上っぽくなってきたが、妻のためだけに生きる夫というのもいいんじゃないかい。またこれがよく合う。

そしてこの映画の愁眉は北林谷栄ばあさん。このひとのための映画だろう。私の記憶の中では最初からばあさん役だが、この人のばあさん役ほど我々をほっとさせる人はいない。その言葉のひとつひとつ、しぐさの重み、とぼけた表情ににじみ出る暖かさ。この映画はこの人に会いに行くだけでも金払う価値がある。91歳万歳。

そして、田村高広演ずる主人公孝夫の恩師。かっこよすぎ。胃がんを患って、死んでいく役だが、あんだけ毅然と死なせられたら、自分死ぬときにプレッシャーかかりそうな死に方だ。ちょっと前に見た「ロード・トゥ・パーディション」でポール・ニューマンをうれしく思ったが、日本で銀幕のスターをはれる人は今や、この人だけだろう。その期待と思い入れを十分背負って余りある演技だった。弟様たちとは格が違うんだよな。

長野県飯山市を中心にロケを敢行した映画だが、この辺は最近こうした映画のロケに力を入れ、街を活性化させていると聞いた。山形も田舎なら負けない。監督さーん、映画撮るんなら、山形もいいですよ。

「阿弥陀堂だより」

監督 小泉堯史  
出演 寺尾 聰  樋口 可南子 北林 谷栄  田村 高広  2002年 日本作品


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