時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

延慶本について その2

2006-11-14 23:02:32 | 日記・軍記物
さて、全体的に感じた「延慶本」の感想は次の通りです。

(1) この動乱の時代に起きた出来事が比較的史実に忠実に記されている。
実は、「延慶本」に記載されている出来事を年表に並べて「玉葉」と照らし合わせて見ました。
すると、1,2日の時間的ずれがある場合もありますが
「延慶本」に記されているのと同じ内容や類似した事件が同時期にあったらしいということが「玉葉」*によって確認されました。
(実に大変な作業でしたこれが・・・実はまだ全部はこの作業終わっていません)
もっとも、全部が全部史実通りというわけではないようですが。

(2) 坂東の出来事がかなり詳しく記されている。
「語り本」ではほとんどスルーの石橋山や頼朝の房総進軍などがしっかりと記載されています。
「源平盛衰記」とダブル所も多いので「盛衰記」は「延慶本」がベースになっているのかとも思えます。

(3) やたらと「神仏にお願い」記事が多い。
特に全国規模で内乱が起きた時期(1180年頼朝らの挙兵以降)朝廷関連の記事では
「お祈り」の記事が多いのが目立ちます。
この辺りが非常に中世的だなあと思います。

(4) 1180年以降各地で動乱が起こりそれに動揺する京の宮廷や都の様子が
かなり詳しく書かれていて「大変だったんだなあ」と当時の都や近畿の人々に
同情します。

(5) 色々な「宣旨」「院宣」「願文」が「原文」に近いと思われる状態で記載されています。
今度あらためてじっくり読んでみたいと思います。

(6) 「読み本」では「追加記載」と思われている「建礼門院」の記事がさりげに
「本文」最後の方に普通の流れで入っています。
で、ラストは「両親に先立たれて流罪となった少年がこんなに出世すると誰が思ったでしょうか
真に果報なことである」
で終わっています。(ネタバレしましたごめんなさいm(--)m) 


*玉葉 摂政九条兼実が遺した当時の日記
   色々な出来事が詳細に記されているため
   史料的価値が非常に高いとされている。
    (風説の含まれていることもありますが、事実の記載です)

つづく