欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

今夜もお月様は見つめてる

2012-03-08 | une nouvelle
とある紳士が今夜もお城のバルコニーでバイオリンを奏でています。
その音色は紳士の心を映すかのように哀愁に満ちていて、時に深い悲しみが他人(ひと)の心をうちます。
バイオリンを弾いていると、横に大きなみずたまりがあるのに紳士は気づきました。
演奏をやめて、よく見てみると雨でもないのに地面が濡れているのです。
ふと見上げてみると、月が大きな顔で紳士の方を見つめていたのです。
あなたの涙ですか?
紳士の問いかけに、月は大きくうなずきます。
いったいどうしたというのです?
君の演奏には心深いものがにじみ出ていて、わたしの胸をつく。だから、もうすこし聞いていたいのだが、続けてくれないかい?
紳士は言う通りに奏で続けました。
お城のまわりには雨でもないのに水たまりがたくさんできていき・・。
やがて、演奏が終わると月は、
お礼になにかできることはないかね?
紳士はしばらく考えましたが、やがて、
わたしを遠い国へ連れて行ってほしいのです。南の日ざしが明るい国がいい。ここはあの人の思い出がいっぱいだから・・。
わかったよ。明日、大きな帆を用意しておきなさい。わたしの息で南の国へ誘(いざな)ってあげよう。
紳士はふと、
しかし、わたしのような気持ちなどお月様は味わったことがないでしょう? こんな悲しい思いをどうして味わう必要があるのです?
月はうなずきながら、
人も月も心は同じものさ。でも、悲しみは心を澄ませてくれる。だから、わたしは悲しみによってよりやわらかな光を君たちに届けることができるのだよ。だから、いつも地球の出来事を見つめているのさ。月が輝いて見えるのは人々の悲しみがより深まったのを感じた時さ。
皮肉なものですね。
でも、この光によって癒される人もたくさんいるのだよ。まぁ、君のバイオリンには負けるかもしれないけどね。

おばあちゃんからもらった媚薬

2012-03-08 | une nouvelle


バラを片手にダンスを踊る男たち。
今宵は意中の彼女をゲットできるか、きらびやかな宮殿のホールでとびっきりの服を仕立てて、必死の流し目シャワー。
お嬢さん、僕と楽しみませんか?
彼女はふっと目をそらし、恥ずかしげな笑みを浮かべて。
わたしは魔性の女などと言われていますのよ。それでもよろしいかしら?
わたしの好みは魅惑の美女ですよ。
ふふふ、あなたなら大丈夫そう。今夜は一緒に楽しみましょう。
ふたりは音楽に合わせながらステップを踏み、
不思議とわたしを愛した人は亡くなっていくの。でも、けっしてドラキュラなんかじゃないのよ。
男は彼女の体を抱き寄せて、
血を吸われないわたしは幸いです。
とてもおもしろい人ね。あとでわたしの手料理をごちそうするわ。だれもが口にして言葉がでないようなおいしいもの。愛をこめてね。
そう、こもり過ぎていけないのかしら。おばあちゃんからもらった秘伝の媚薬を入れて。それでいつのまにか男の人がいなくなってしまうのよね。