とある紳士が今夜もお城のバルコニーでバイオリンを奏でています。
その音色は紳士の心を映すかのように哀愁に満ちていて、時に深い悲しみが他人(ひと)の心をうちます。
バイオリンを弾いていると、横に大きなみずたまりがあるのに紳士は気づきました。
演奏をやめて、よく見てみると雨でもないのに地面が濡れているのです。
ふと見上げてみると、月が大きな顔で紳士の方を見つめていたのです。
あなたの涙ですか?
紳士の問いかけに、月は大きくうなずきます。
いったいどうしたというのです?
君の演奏には心深いものがにじみ出ていて、わたしの胸をつく。だから、もうすこし聞いていたいのだが、続けてくれないかい?
紳士は言う通りに奏で続けました。
お城のまわりには雨でもないのに水たまりがたくさんできていき・・。
やがて、演奏が終わると月は、
お礼になにかできることはないかね?
紳士はしばらく考えましたが、やがて、
わたしを遠い国へ連れて行ってほしいのです。南の日ざしが明るい国がいい。ここはあの人の思い出がいっぱいだから・・。
わかったよ。明日、大きな帆を用意しておきなさい。わたしの息で南の国へ誘(いざな)ってあげよう。
紳士はふと、
しかし、わたしのような気持ちなどお月様は味わったことがないでしょう? こんな悲しい思いをどうして味わう必要があるのです?
月はうなずきながら、
人も月も心は同じものさ。でも、悲しみは心を澄ませてくれる。だから、わたしは悲しみによってよりやわらかな光を君たちに届けることができるのだよ。だから、いつも地球の出来事を見つめているのさ。月が輝いて見えるのは人々の悲しみがより深まったのを感じた時さ。
皮肉なものですね。
でも、この光によって癒される人もたくさんいるのだよ。まぁ、君のバイオリンには負けるかもしれないけどね。
その音色は紳士の心を映すかのように哀愁に満ちていて、時に深い悲しみが他人(ひと)の心をうちます。
バイオリンを弾いていると、横に大きなみずたまりがあるのに紳士は気づきました。
演奏をやめて、よく見てみると雨でもないのに地面が濡れているのです。
ふと見上げてみると、月が大きな顔で紳士の方を見つめていたのです。
あなたの涙ですか?
紳士の問いかけに、月は大きくうなずきます。
いったいどうしたというのです?
君の演奏には心深いものがにじみ出ていて、わたしの胸をつく。だから、もうすこし聞いていたいのだが、続けてくれないかい?
紳士は言う通りに奏で続けました。
お城のまわりには雨でもないのに水たまりがたくさんできていき・・。
やがて、演奏が終わると月は、
お礼になにかできることはないかね?
紳士はしばらく考えましたが、やがて、
わたしを遠い国へ連れて行ってほしいのです。南の日ざしが明るい国がいい。ここはあの人の思い出がいっぱいだから・・。
わかったよ。明日、大きな帆を用意しておきなさい。わたしの息で南の国へ誘(いざな)ってあげよう。
紳士はふと、
しかし、わたしのような気持ちなどお月様は味わったことがないでしょう? こんな悲しい思いをどうして味わう必要があるのです?
月はうなずきながら、
人も月も心は同じものさ。でも、悲しみは心を澄ませてくれる。だから、わたしは悲しみによってよりやわらかな光を君たちに届けることができるのだよ。だから、いつも地球の出来事を見つめているのさ。月が輝いて見えるのは人々の悲しみがより深まったのを感じた時さ。
皮肉なものですね。
でも、この光によって癒される人もたくさんいるのだよ。まぁ、君のバイオリンには負けるかもしれないけどね。