ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

ハマった本

2011-09-13 00:58:16 | Weblog
フランスの原子力関連施設で爆発という記事をインターネットで見て、
何とも悲しい気持ちになった。

フランスが原発大国であることを知ったのは、社会科の授業ではなく、
1冊の本によってだった。
それは、笠井潔さんの『サマー・アポカリプス』。

別に、原発について書かれた本ではない。
現象学の観点により事件を解決していく探偵・矢吹駆シリーズの2作目だ。

この作品には、シモーヌという名の女性が登場する。
彼女がシモーヌ・ヴェイユをモデルにしているということから、
ヴェイユの著作を読むようになった。

そして、作中のシモーヌの弟は、
物語の最後に、莫大な資産をもつ女性と結婚し、原子力ビジネスへと乗り出していく。
彼のビジネス的な成功までは言及されていないけど、
おかげでフランスの原発依存度をネットで調べてみる気になった。

中世のキリスト教の異端カタリ派についても、
カルカソンヌという地名を知ったのも、この作品。
思えば、たくさんの出会いをくれた作品だ。

昨晩、早く寝ようと思ったのに、笠井潔さんの評論、
『探偵小説と叙述トリック』を読み始めたら止まらなくなり、
本日、ついさきほど読み終わって、満足とともにホッとしてパソコンを開けたら、
フランスの報道を見つけた。

ついさっきまで、叙述トリックである「言い落とし」は、
探偵小説に限らず、私が接しているような文章でもあることだと
考えていたところだった。
あえて「いいこと」を書かなかったり、「悪いこと」に触れなかったりする。
報道なんて、そんなののオンパレードだし、このブログだってそうだ。
また、会話で、さりげなくそういう話術を使える気のきく人もいる。

そんなことを考えながら、いろいろなことを思い浮かべて、
やはり最後に、『サマー・アポカリプス』を貸してくれた今は亡き編集の先輩を思った。

「何か面白いミステリーありませんか?」というアホ丸出しなお願いに、
何冊かミステリーを貸してくれた。
返却時に、簡単な感想を聞かれて話しているうちに、ある日、
「じゃあ、次はこれだな。きっと面白いと思うと思うよ」と、
矢吹駆シリーズの最初の3冊を差し出してくれた。

返すときに、「どれが一番面白かった?」と聞かれ、
「サマー・アポカリプス」と答えた。
そして、先輩の思惑どおり、ドップリとハマった。

フランスは、日本語だと仏国、中国語だと法国。
とりあえず原発にあれだけ依存していたら、「ほとけ」ではあるまい。
「法」の国であるかどうか、さて。