ROSE POSYのハンドクラフト・ブログ

”手仕事”の楽しさをお伝えできればと思います。ROSE POSYオリジナル作品もどうぞお楽しみ下さい。

マリッジリング考 【その1】ふたりでとことん、こだわろう!

2007年05月22日 | ジュエリーよもやま話
最近親しくなった女性から、彼と婚約したというハッピーなニュースを聞きました。そして、結婚の記念の指輪を自分たちでデザインして形にしたいとのことで相談がありました。

ステディ・リングでなく、マリッジリングだと言うのでこれは責任重大!


彼氏がAdobe Illustratorで、ジュエリーデザイナーも顔負けのプロっぽい素敵なデザインを描いてくださいました。

著作権上、図はここではお見せできませんが、とてもスタイリッシュで都会的なデザインでカッチリとしたシンメトリーの直線的フォルム。幅も高さもあり、かなり大ぶりです。メンズジュエリーによく用いられる印台形のデザインで、シルバーでのご希望。クロスの細い彫り線が上面と側面に装飾として入っており、その部分を黒く彩色してほしいとのことでした。
 
まさに、そのデザインはCADのためにあるといってもよいものでした。(手じゃ絶対にできましぇん!)

私はCADを始めて初のオーダーを受けたことに有頂天で嬉々として次の日、ラ・ヴァーグの校長先生にデザイン画をお見せして相談しました。

先生は黙ったまま、私の目の前でそのデザイン画を見ながら神業のような速さであっというまに設計して、地金にしたときの重量まで割り出しました。そして、ひとこと

「かなり重くなるよ。裏抜きしても15gとか20gくらいになっちゃうんじゃない。メンズだったらまあいいけど、彼女のはどうかな・・・。」

とクールなコメント。うぅぅぅ・・・。

メンズのカジュアルリングならともかく、マリッジリングの20gって女性にはありえない重さです。肩が懲っちゃって長時間つけていられないでしょう。


重量の問題に加えて、制作コストの問題もありました。
ジュエリーの制作コストは、シルバーだろうがプラチナだろうが、かかる手間は一緒です。量産品と違って一点ものの場合は、各工程のコストのすべてが1つの商品に課されてしまいます。シルバーの地金がいくら安いといっても、原型から造る制作費はプラチナと変わらないのです。

もうひとつ、機能性に懸念がありました。鋭いエッジと角があるのでモノや人に傷をつけるため、家事や育児の邪魔になってしまう可能性もあります。

最後に、その指輪が女性のライフスタイルの変化についていけるか?という疑問もありました。(そのメンズライクなリングが、ママになり、オバチャンになりおばーちゃんになっても、彼女に似合っているか???)斬新なデザインほど、そうした点が気になるものです。

これらの問題点についてその女性の方に正直にお話をして、デザインを再検討してもらうことにしました。

もちろん、言われたとおりに作ることは簡単です。でも、本当に満足してもらいたいし、ずっと気に入ってもらいたいから、こちらもついつい真剣になってしまう次第です。

今回、私にとっても本当にいい勉強になりました。

マリッジリング、夫婦で一生つけるものだから、とことん、自分たちで悩んで、こだわって欲しいですね。

カップル同士で、いろいろと迷う時間も楽しいはず・・・。ふたりで一緒に”ものづくり”をする機会は共通の趣味でも持たない限り、これからめったにありません。この時を大切にして欲しいと思います。最終的にオーダーをあきらめ、量産製品に落ち着いたとしても、その間のプロセスは二人にとって、いい思い出になると思います。




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