リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

320. マティアス・ヴェニガーさんのお仕事

2023年07月27日 | 旅行


ニュルンベルクのホテルで初めてお目にかかったヴェニガーさん
 出張からの帰り道で大変お疲れのご様子でしたが、写真集を見て喜んでくださいました。

 

 前回の投稿から大変ご無沙汰いたしました。

今日はドイツの友人の一人、ミュンヘン、バイエルン国立博物館の学芸員、マティアス・ヴェニガー博士の素晴らしいニュースが届いたので是非ご紹介したくて久しぶりに投稿します。

彼は最近大変忙しそうで、今年もドイツに行くのですがなかなかあう時間が取れないようです。普段ならすぐに返信が来るのにしばらく返信も届かず心配しました。でもこの記事を読んでどうしてヴェニガーさんがこれほど忙しいのか理由がわかりました。皆さまにも彼の最近のお仕事をご紹介したいと思います。

元の記事を読みたい方はウェブサイトでご覧になってみてください。

 

German curator on a mission to return silver heirlooms stolen from Jewish families by the Nazi - The Mainichi

German curator on a mission to return silver heirlooms stolen from Jewish families by the Nazi - The Mainichi

MUNICH (AP) -- Matthias Weniger put on a pair of white cloth gloves and carefully lifted a tarnished silver candleholder, looking for a yellowed stick

The Mainichi

 


 英語の文章がよくわからず、記事の内容を読み解くためにDeeple翻訳ソフトを利用して、私が出来る範囲で意訳も付け加えたものが以下の文章です。拙い訳ですが載せておきます。

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The Mainichi
2023 年 6 月 14 日


ドイツ人学芸員、
ナチスによってユダヤ人家庭から盗まれた
銀の家宝を返す使命を担う


ミュンヘン(AP)--マティアス・ヴェニガー氏は、白い布の手袋をはめ、変色した一対の銀
の燭台を慎重に持ち上げ、その底に付いている黄ばんだステッカーを見つめた。


この燭台は、バイエルン国立博物館にある 111 点の銀製品のうちの一点である。これらの銀
製品は1939 年の第三帝国時代にナチスがユダヤ人家庭から盗んだものだった。ナチスは政権
を取
ると、すべてのドイツ系ユダヤ人に対して彼らが所有している銀製品を質屋に持ち込む
よう
に命じた。これはユダヤ人を辱め、罰し、排除するために作られた多くの法律のひとつ
であ
る。


1933 年、ナチスがドイツで政権を握った後、ユダヤ人に対する差別と迫害が始まった。そ
して 1945 年にドイツが降伏して第二次世界大戦が終わるまでの間に、ナチスはヨーロッパ
のユダヤ人やその他の人々 600 万人を収容所(ホロコースト)で殺害するに至ったのだ。
ミュンヘンのバイエルン国立博物館の学芸員であり、返還活動を監督するヴェニガー氏は、
できるだけ多くの銀製品を元の所有者の子孫に返還することを使命としている。


「質屋に持ち込まれたこれらの銀製品は、ホロコーストで一掃された人々から残された唯一
の生存の証であることが多いのです」。ヴェニガー氏は AP 通信のインタビューに答えた。
そのインタビューは今後返還されるはずの銀食器が展示された博物館のワークショップで行
われたものだった。
「ですから、遺族を探し出し、彼らに返還することが本当に重要なのです」と彼は付け加え
た。


ユダヤ人家庭から持ち去られた何千もの品々は、約 135 トンの銀に溶かされ、ドイツの戦争
を助けた。しかし、いくつかの博物館には、安息日の前夜にロウソクを灯すための燭台、ワ
インを祝福するためのキドゥシュ・カップ、銀のスプーン、ケーキ・サーバーなどの数百の
銀製品が残されたのだった。


1950 年代から 1960 年代にかけて、ホロコーストの生存者が名乗りを上げ、盗まれた品々を
積極的に取り戻そうとすれば、返還されるものもあった。しかし、持ち主の多くはホロコー
ストで殺害されたり、またナチスから逃れることができたとしても、世界の遠く離れた場所
で亡くなった。
「最後の所有者の 3 分の 2 はホロコーストを生き延びることができませんでした」とヴェニ
ガー氏は言う。

ヴェニガー氏は、このような困難な状況にもかかわらず、綿密な調査、献身的な活動、そし
て歴史に関する深い知識を駆使して、これまでに約 50 点の品々を元の所有者の家族や親戚
に返すことに成功した。
氏は、今年中に残りの遺品をほぼすべて返還できると確信している。

まず、彼は元の所有者の身元を探す。いくつかの作品に貼られている小さな黄ばんだ紙のス
テッカーが彼を助けているのだ。それは質屋によって貼られたもので、独裁政権と戦争の時
代にあっても、ドイツ人の執拗な官僚主義が残っていたことを物語っている。ステッカーに
書かれた番号は、80 年以上前の文書にも銀製品の保存を諦めて質屋に差し出した人々の名
前が記載されているのだ。時には、何世代にもわたって家族に受け継がれてきた愛着のある
家宝もある。


ヴェニガー氏は元の持ち主の名前を見つけると、ユダヤ人の死亡記事と系図のデータベース
を調べ始める。直系の子孫やもっと遠い親戚がネット上に名前を載せているかもしれないと
期待して。
「そうして電話帳を通じてある世代から次の世代へと繋がっていき、LinkedIn、Facebook、
Instagram や E メールアドレスなどなどが、その家族の若い世代に対応していくことになり
ます。」
と研究者は説明した。

ほとんどの場合、ヴェニガー氏は幸運にも正しい親族を探し出すことができているという。
子孫の大半は米国とイスラエルに住んでいるが、同博物館はすでに、あるいは現在進行形で
フランス、イギリス、オーストラリア、メキシコに住む遺族にも銀製品を返還している。
そしてヴェニガー氏は個人的に遺族に作品を届けるようにしているのだ。彼は今年の早い時
期にアメリカに渡った。また先週はイスラエルの遺族に 19 点の品物を返還してきた。


そのイスラエルでヴェニガー氏は、テルアビブの北にあるクファール・シュマリャフの自宅
を訪ね、ヒラ・グートマン(53 歳)と彼女の父ベンジャミン・グートマン(86 歳)に会い、
小さな銀の杯を手渡した。
ヴェニガー氏は、マゲン・ダヴィッド・アドム(イスラエル版赤十字国際委員会)の追跡サ
ービスの助けを借りて一家を探し出すことができたのだ。

この杯は、安息日の前夜にワインを祝福するキドゥシュに使われたものだと思われるが正確
にはわかっていない。というのも、ベンジャミンの祖父母であるバイエルンの牛商人サロモ
ン・グートマンとその妻カロリーナが元の所有者だったのだが、祖父母はナチスによってト
レブリンカ絶滅収容所で殺されたからだ。
「この杯を取り戻すのは、私たちにとって複雑な気分でした。なぜなら、ご存じのようにそ
れが祖父母の唯一の遺品であるからです」と語った。
ベンジャミン・グートマンの祖父母はホロコーストで殺害されたが、彼らの息子マックス(ベ
ンジャミンの父)は、ナチスから逃れてイギリス領のパレスチナ(現在のパレスチナ自治区)
に逃れたため、生き延びたのだった。

銀の杯を失い、それを返された悲しみにもかかわらず、グートマン夫妻は、銀の杯を取り戻
せたことを喜んでいる。そして 9 月のユダヤ暦の新年であるロシュ・ハシャナーには、親戚
一同と共にこの銀の杯で儀式を行うことを計画してるという。

ヴェニガー氏について、グ-トマン夫妻は彼と彼の仕事を賞賛している。
「彼は本当に献身的です。」ヒラ・グートマンは言う。「彼はこの小さな杯をとても大切に
扱っています。まるで聖なるもののように。」

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 私はこの記事が毎日新聞の英語版で取り上げられたことに驚きました。でも記事を読んでとても嬉しく思いました。ヴェニガーさんのお仕事を友人の1人として大変誇りに思っています。

 


バイエルン国立博物館の入口でヴェニガーさんと

 もうすぐ私たちもまたドイツを訪ねます。ヴェニガーさんには会えないかもしれませんが、それでも今までのように後期ゴシックの彫刻も含めて新たにロマネスク時代の教会で見られるという柱頭彫刻も訪ねてくるつもりです。
 ヨーロッパでは鉄道や町中でのストライキがあったりするので予定通り回れるかどうかわかりませんが、また帰国後にしばらくエネルギーを養い、少しずつ皆さまに旅のご報告ができればと思っています。

 本当に暑い夏、どうか皆さまも無事に乗り越えられますように。

 

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