では、諸外国・地域ではどうだろうか。訪日外国人でにぎわう大阪・ミナミで、各国・地域の人たちに聞いてみると、大部分、大阪と同じ「右立ち」という回答が返ってきた。中国、韓国、米国、カナダも「右立ち」だという。
こんな文章で記事は始まっている。調査論文らしいから、大阪でいろんな国の人に聞いている。
台湾・台中市から来た女性は「台北では大阪と同じ『右立ち』だけど、台中は『フリースタイル』。左もOKです」。韓国はどうか。ソウル市の男性会社員、朴宣泰さんは「右側に立ちます。左の人もいるけど、右側が多いですね」。米ニューヨークから来た20~30代の女性3人組のうちの1人は「米国でも右立ち。ほかの国もそうではないか」、カナダ・オタワの22歳の男女2人も「大阪と同じ」という。一方、ノルウェーの20代エンジニアの男性は「ルールはない」。チェコからやってきた女性も「ノールール」という回答だった。
なぜ関西が『右立ち』になったのか? その起源についてこのように書かれている。
「右立ち」のルーツは阪急梅田駅だった「右立ち」はいつ、どこで始まったか。昭和42年、阪急梅田駅が現在の場所に移転した当時、始まったとみている。阪急電鉄によると、かつての梅田駅は百貨店と駅が一体になっていたが、昭和42、44、48年の3段階で駅を移転。42年にまず神戸線が移り、このときに1~3階をつなぐエスカレーターと、動く歩道が設けられ、駅と百貨店をつないだ。
なるほど、昭和42年か。
東京オリンピックがあり、新幹線もその頃に始まったのである。エスカレータなるものもその頃にお目見えしたのだろう。私が30才になったばかりのころで、車の免許は持っていたが、マイカーはまだ、カラーテレビもまだ家にはなかった時代である。
その頃は仙台にいたが、仙台にはエスカレーターはなかったのかも知れない。
同電鉄によると当時、駅で放送していたのは、「エスカレーターを走って上り下りするのは大変危険ですからおやめください。またお歩きになる方のために左側をお空けください」という内容だったという。左側を空けると、右に立つことになる。
「阪急電鉄社内でも、急ぐ人のために左右どちらを空けたらいいか議論があったようだ。実際にエスカレーターに乗った人々を見てみると、右側に立つ人が多かった。それで、こうしたアナウンスになった」だが、現在、この右立ちの慣行が定着しているのは大阪と兵庫県の姫路くらいまでで、同じ関西でも京都では右立ち左立ちの混在となる。東日本だけでなく、西日本も含め日本の大部分は東京と同じ左立ちだ。
世界では車の通行と一致で、圧倒的に右立ちが多い。東京で左立ちが始まったのは梅田駅の20年もあとのことだと書いてある。
日本で、片側を空けて立つようになったのは、昭和42年の阪急梅田駅が最初だ。これに対し、東京で左立ちが始まったのは梅田駅より20年以上遅れた平成元年ごろで、営団地下鉄新御茶ノ水駅で自然発生的に起きたという。世界的には、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ハンガリー、中国、台湾、韓国、香港などの国・地域が、大阪と同じ右立ちで、圧倒的に多い。東京などと同じ左立ちはシンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどだ。
左右どちらに立つかは大部分、車などの通行法と一致しているという。つまり、右立ちの国は右側通行で、左側が追い越し車線に、左立ちの国は左側通行で、右側が追い越し車線になっており、車と同様に、急いでいる人が追い越し車線を通り抜けていくことになる。
日本で右立ち左立ちの片側空けが広がった背景として「学ばねばならない欧米の立派なマナーという意識が極めて強かった」ことをあげている。さらに、東京方式が大阪方式より広がったことについては「東京の文化こそが先進的でおしゃれ」という意識が働いたとも指摘している。
エレベーター・エスカレーターのメーカーでつくる「日本エレベーター協会」の担当者は「約1メートルの幅がある製品では、2列で乗ることを推奨している」と説明したうえで、「エスカレーターはステップが一般の階段より高く、歩くように設計されていない。歩くと足を踏み外すなどして転落のおそれがある」と指摘する。
だが現在も、大阪市内の阪急梅田駅や南海難波駅の長いエスカレーターで乗客を見ると、整然と右側に立ち、急いでいる人は左側を歩いて通っている。
確かに、『2列に乗ってじっと立っていればいいのに、なぜそんなに急ぐのだろう?』
暇に任せて読んだ調査論文だが、知らないことが多くてオモシロかった。
みなさん、ご存じでしたか?
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