「芦屋道満大内鑑(アシヤドウマンオオウチカガミ)葛の葉(クズノハ)」(女房葛の葉・葛の葉姫 中村七之助)
安部保名に一命を助けられた白狐は、保名の許嫁の葛の葉姫に化け、保名と所帯をもち、一子をもうける。(この子が、晴明。)しかし本物の葛の葉姫が現れたことにより、子を保名に托し、狐の葛の葉は去る。障子に「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる信田の森の恨み葛の葉」という別れの歌を残す。悲しい話。子を両手に抱き、口に筆をくわえ、歌を書く葛の葉があわれ。畜生のためか、左手に筆を持って書いたときは、裏文字。
狂言「末広がり」(太郎冠者 中村勘九郎、万商人 中村国生、分限者宝斉 片岡亀蔵)
祝言を挙げる娘福子のお祝いに、分限者宝斉より末広がり(扇子)を買い求めるよう命じられた太郎冠者。ところが、末広がりが何か分からない。都へ赴いた太郎冠者は、万(ヨロズ)商人の口車に乗せられ、末広がりの代わりに傘を、売りつけられてしまう。さらに福子へのお土産として毬を買う。傘と毬を持ち帰った太郎冠者が、主人宝斉を説得する様子が、面白い。踊りが楽しい。
近松門左衛門作「女殺油地獄(オンナゴロシアブラノジゴク)」(河内屋与兵衛 尾上菊之助、お吉 中村七之助)
大店河内屋の息子与兵衛は、放蕩三昧で借金に追われる。今日も喧嘩のはずみで、侍に無礼を働く。そして与兵衛は、継父の徳兵衛や妹おかちにも、手をあげる。見かねた母おさわが、与兵衛を勘当し追い出す。その晩、借金の返済に困った与兵衛は、同業の油屋の女房お吉を頼ろうと、店を訪れる。どんなに頭を下げても金を貸さないお吉を、与兵衛が殺し金を奪う。刹那的に生きるチンピラ風青年の自己中心的殺人。