季節を描く

季節の中で感じたことを記録しておく

“カルティエ・クリエイション”展(東京国立博物館表敬館:2009.4.26)

2009-04-27 00:06:17 | Weblog

  春の夕刻、午後4時半、国立博物館に行く。目指すのは“カルティエ・クリエイション”展。表敬館。  とても混んでいたので空いているところから見る。                  

  そこは2階:ルームCである。最初に見たのは1930年代半ばすぎの作品。169「ネックレス」(1936年)はルビー66個の赤が美しい。170「ティアラ」(1937年)はアクアマリンの青が魅力的。171「ネックレスとブレスレット」(1936年)は淡い緑色の宝石を使うが、これはぺりドットである。172「ティアラ」のオレンジ色の宝石はシトリン。宝石の中で人気があったルビー(赤)、エメラルド(緑)は高価である。1929年に始まる世界恐慌の不況の中、それまで「半貴石」とされていた宝石が使われるようになった。それがアクアマリン(青)、ぺりドット(緑)、シトリン(橙)などである。

シトリン

アクアマリン

ペリドット

 

 

 

    

  20年代の最後の頃以降、30年代はジュエリーはプラチナとダイヤモンドを使って製作され白が主流となる。ホワイト・アール・デコの時代である。163「バングル」(1937年)はその典型である。この作品は幾何学的に四角が並び端正でいかにもアール・デコを感じさせる。 193「ネックレス」(1928年)は大きく五重になっており巨大なシトリン(黄色)が際立つ。プラチナとダイヤモンドが基調の儀式用ネックレスでインドのマハラジャのために製作された。 

                            poster for 特別展「Story of …」カルティエ クリエイション~めぐり逢う美の記憶            マハラジャ

  1930年代の終わりになるとイエローゴールドが再び多く利用されるようになる。ゴールドは土台であるだけでなく、そのものが装飾品・宝石として使われる。第2次大戦でプラチナは「戦略的」素材と宣言されゴールドのみが唯一の入手可能な貴金属となった。178「ブレスレットとイヤークリップ」(1938年)のセットはゴールドの黄色とサファイアの青の対照が美しい。大きな四角が並ぶデザインはシンプルで大胆である。 

  2階:ルームDでは、199「『2本のフェーン(シダ)の葉』ブローチ」(1903年)が落ち着いた感じでとてもよかった。プラチナに規則正しく作られたくぼみにダイヤモンドが精細にマウントされた「ミルグレイン」のセッテングである。これは1900年代に登場した新しい宝石のスタイルである。重々しい金や銀の土台からプラチナの土台へと変化した。プラチナの強靭さと可鍛性がきらめく糸状の金属を土台とするという革新を生み出す。

                             スクロールティアラ

  217「ブレスレット」(1925年)はプラチナ、ダイアモンドの白とコーラル(珊瑚)のピンクの組み合わせが優雅である。珊瑚はカルティエが選好した素材の一つである。 

  2階:ルームFは花と動物のコーナーである。1933年、ルイ・カルティエはジャンヌ・トゥーサンをハイ・ジュエリー部門のトップとする。彼女は様式化されたアール・デコから離れて花と動物を装飾化する。これは「トゥーサン趣味」と呼ばれる。これはカルティエの新たな伝統となった。257「『ブルーローズ』クリップ・ブローチ」(1959年)はサファイアの青いバラが美しく魅力的である。260「『開閉式』フラワー・クリップ・ブローチ」(1969年)、261「『開閉式』フラワー・イヤー・クリップ」(1967年)はほぼ同形の作品である。ゴールド・ワイヤーでできた花弁の金色が華麗でありそこにエメラルド(緑)・サファイア(青)・ルビー(赤)・ダイヤモンド(白)の花蕊がきらめく。

  動物では「キメラ」のモチーフが神話的多義性と力強さを表現する。264「『キメラ』バングル」(1980年)は金の体とエメラルドの眼(緑)の対照がどきどきさせる。264「『双子のキメラ』の頭部バングル」(1980年)はホワイト・ゴールドとダイアモンドの白い体に赤いルビーの模様の組み合わせが力強くすばらしい。 

  1階:ルームAでは034「『エジプト』スタイル ペンダント」(1913年)が夢の国のおとぎ話のようにかわいい。プラチナとダイアモンドが基調だがオニキスの黒が神秘的である。第2次大戦前の時期はカルティエではオニキスの使用が盛んであった。オニキスはダイヤモンドまた宝石それぞれの個性を際立たせる。(Cf. 後に1922年にハワード・カーターによるツタンカーメン王の墓の発見はエジプトの流行を生み出す。)025「ストマッカー(胸飾り)ブローチ」(1907年)はプラチナとダイアモンドの白にサファィアの青が映える。 

  1階:ルームBにはイスラム教ペルシアやインドの芸術の影響を受けた作品がある。これは1910年以降、カルティエの作品の一部に見られる。098「『インド』スタイル クリップブローチ」(1938年)はダイアモンドのほかにいくつものサファイア(青)、ルビー(赤)、エメラルド(緑)、ターコイズ(水色、トルコ石)などが房になった豪華なものである。102「ティアラ」(1936年)はプラチナと彫刻を施したターコイズ(水色)の組み合わせが異国趣味を示す。 

  一通り見終わればもう夕方5時30分に近い。夕刻で上野公園は風が強く寒かった。

                                  クロコダイルネックレス