アール・ヌーヴォーとアールデコをともに代表する巨匠ルネ・ラリック(1860-1945)の美術館である。彼は初めアール・ヌーヴォー時代、宝飾デザイナーとして活躍していた。彼の宝飾品は1900年パリ万国博覧会に100点以上出品され大成功をおさめる。その後、1908年、初めてフランソワ・コティのために香水瓶を制作し、これがまた成功する。こうして彼は第1次大戦後、戦間期、アール・デコを代表するガラス工芸作家となる。1925年パリのアール・デコ(装飾美術・工業美術)博覧会で彼は会場のモニュメントとなるガラスの噴水を製作した。
アール・ヌーヴォーの彼の装飾品はジャポニズムを引き継いだトンボ、蝶のモチーフが傑出している。また七宝焼きの微妙な淡い色合いが美しい。アール・デコの彼のガラス製品は単に工業美術的でなく、装飾美術的要素が強い。装飾における単純さと過剰さがきわどいバランスを保っている。
ラリックが制作したガラス・パネルで飾られた「オリエント急行」の車内が予約制(コーヒー・デザート付き)で見られる。アガサ・クリスティ原作「オリエント急行殺人事件 」(1974年の映画)で撮影に使われた列車、その1両が展示されている。