想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

地上の王 その2

2008-06-11 09:43:09 | Weblog
     ‥続き)
     子供は手にした枯れ枝で灰をいじりまわすので焚き火はくすぶる。

     風向きが変わり煙はちょうど子供の顔の高さに流れて行く。

    「おばさん、どうしてその棒もってるの?」
    「これ? これは武器よ、闘うための」
    「カラスは逃げてったよ。それに高くて届かないよ」

    「焚き火をかき回すための棒なのよ、本当は。でも持っていると
     獣は怖がるからね。太古の時代から、ヒトは武装して獣を追って 
     食べられるものは食べ、食べられない獣はできるだけ遠ざけるよう
     にしてたの。そうしないと自分のおうちが作れないでしょ。」

    「おばさん、蛇、食べられるって聞いたよ、おじさんに」

    「ふーん、おばさんはカエルが苦手。蛇はカエルが好物なのよ。この辺は
     近頃カエルがよく跳ねてるでしょ、だから蛇がいたのね。
     お腹にカエルさんがいたかもしれない。だからダメね(ウソ)。
     どっちかっていうと、おばさんは草食派ね。」
    「ソー食だといいの?」 

    「草食ったって、おばさんはまだ未熟もんだから野草のことは知らないの、
     ヤギとか牛のオッッパイで作ったチーズは好きだけど、肉は食べないのよ」
    「お肉でバーベキューとか、しないの?」

    「焚き火で? バーベキューねえ。してもキノコを焼くのがいいね。」
    「昔はソーセージとかあったかなあ?」

    「ぼうや、火を使うのを覚えたのは動物が怖がるからよ。
     それに道具なの。火を操るのは人だけなの。
     今の人みたいにバーベキューばかりしてたんじゃないのよ、
     キャンプみたいに外で暮らしててもさ」

    「狩りをしてたんでしょ」
    「狩りねえ、そうだわね。今も狩りっちゃ狩りだわ(意味深である) 
     でも、それだと走り回らなきゃならなかったのね。
     だから大変よ、エネルギーがねえ。
     お腹が空くし、だからまたすぐに猟に行く、悪循環よ。」

    「草より栄養はあるよ」
    「そう?そう思うだろうね。でもちょっと違うよ。
     ライオンは狩りに強いけど、獲物を得る確立は低くてたいてい空腹なのよ、
     だから数が減っていくのよね。家族を養うのが大変なのよ。」

    「でも弱肉強食でしょ、世の中」
    「そんなこと誰に聞いたの?どっちかっていうと、狩りより
     タネとか実を拾ったほうが、定住しておだやかに暮らせると思うけどね。
     子供が産まれたら鹿一頭くらいじゃ足りないわよ、食べ物を確保した生き物が
     生き残る、これが鉄則なのよ。今も昔もね。」

    「おばさん、どうして猛獣はどうしてほとんどいなくなったの? 動物園だけだね」
    「だからね、食べ物がなきゃいられないでしょ。ぼうやだって、お腹空いたら
     おうちへ帰るでしょ。おうちにおやつもご飯も無かったらどうする?」
    「ぼくは子供だから、だいじょうぶ。」
    「そおお? 子供だとオトナがエサをくれるって思うわけ?」
    「そうだよ。オトナになったら仕事して給料を貰うんだよ、たぶん。
     猛獣は強いのに生き残れないの?」
    「だから弱肉強食で互いに滅びるわけよ、人はその間を道具で生き延びたのね」
    「人が食べたから減ったの?」
    「食べないわ。食べないけど自分がエサにならないために殺したのね。」
     
    「それが弱肉強食でしょ」
    「ふん、そうだねえ。だとしたらあんた、甘いねえ。
     ほら、この棒きれあげるから、闘いなさい。」


           ↑「ファスナーがうまくしまらないのだよ、ベイビー」

    ぼうやは、できるだけ長い棒を探そうとそこいらに積まれた薪をひっくり返す。
    そんなことをしなくてもあちこちにたくさん落ちているし、
    枯れ枝をつけた木を折るということに気づかない。
    出来合いしか目に入らないのである。

   「アフリカの象さんは、アニンという悪党に空から機銃掃射で親象を殺されたの、
    たくさんの象が一度に死んだわ。孤児になった象がそのときのトラウマを抱えた
    まま成長して、いまや人やサイを襲ってるのよ。
    象だから傷つかないと思うのは人のゴーマンよ。」
   「復讐だね」

   「傷つく前に武装せよ、なの。そして自分を守るの。子供だって親を守れるのよ」
   「暴力はいけないんじゃない? おばさん」
   「おバカだねえ、君。弱いと暴力使うんだよ。だから鍛えなさい。自信をつけて
    弱い者を守るのよ。ライオンと勝負するマサイ族みたいにさ。」

    ちょっとナーバスなうさこオバである。
    子供の不審げな顔をみないようにしている。
   
   人差し指の先っぽをスライサーで1ミリほどカットしてしまったドジなうさこは
   キーボードがうまく使えなくなってしまいました。
   小さな傷がけっこう痛くて、情けなや。
   おまけにドライ・アイと判明。
   昨日はとほほな一日でしたが、
   この話、なんだか長くなりそうなので明日に続く‥です。


     
コメント (2)
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