想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

トメアスの月 詩集になりました

2017-11-12 13:59:49 | 
(津留清美著「トメアスの月」
        11月3日発売)



以前紹介しました津留清美さんの詩
「トメアスの月」を含む詩集が発売に
なりました。

写真にあった本物の月の代えて
大きな月が描かれた表紙は著者の
案によるものです。

カメラで撮った月は小さな点のように
写りますが、人の目には月は大きく輝いて
見えます。津留清美さんはそのことを
「写真は事実を写し取るが、人は頭と心で
月を見る、これは真実」であると言われ
ました。事実と真実、両方あるけれども
詩は真実を表現すると。

この話は11月4日に都内で行われた
「詩と歌のゆうべ」というライブで
披露されました。
朗読は著者本人、バイオリンと競う
ようにして語られた詩は、切々と心に迫る
ものでした。

始め、序にある「はじめての、雨」を
チャールダッシュの伴奏で。
テンポが速いこの曲と、津留さんの
読む声が重なりあって本で読んだ時と
また違った風景が見えてくるのでした。

………
 あとになってわかることだが、
過去は死んでいない、過去にすら
なっていない。壁紙は乾かない。
ーー今のところできるのはこれくらい
です。あとは様子をみておいて
くださいーー
屋根や壁、からだやこころの修理業者は
そう言って立ち去るのだ。
「初めて」を前にそう言うしかない。
死と、詩と、雨。

どんな傘でも覆いきれないものがある。
そこを小さな手で覆い、ふさぎ、雨粒を
はらう。安心というものは束の間のもの
でしかない。ささやかなくり返し。
壁紙は乾かず、しみは広がる。
それでもすべては新しく、美しい、
はずだ。
(p6 序 はじめての、雨
   〜熊本地震のあと より)

ふつうは「しとしと雨」と書くところを
死と、詩と、雨 と表された意味もお話
にありました。大きな地震によって死が
身近に感じられ、またそれは生きること
を意識させることでもあったと。
死を前に、今生きてある事を自覚させら
るということではないでしょうか。
そして詩はそこにある真実を表すと。

この詩集は繰り返し読み、声に出して
読み、なれることのない新鮮な感動が
湧いてきます。
特に地震や台風で被災された方、原発
事故で避難されたままの方、大きな喪失
を抱えたままの人の胸に響くだろうと
思うのです。

単なる感傷を詠んだ詩ではない、
事実を感受し、生きることの意味を
新たにしていく力を得られるような
そんな気がします。

この詩集で流れる涙は悲しい涙ではなく
自らが浄化されていくための涙のように
思えてなりませんでした。

詩集にある詩についてまだ色々と
書きたいこともありますが、
今日はこのくらいにして。
どうぞ書店でお求めになって手にとって
いただければと思います。

全国書店、ネット書店で取扱中です。
書店にないときはご注文で取寄せられます。

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