想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

寡黙なる……森と

2020-10-22 22:23:11 | Weblog
森は寡黙ではない、
そう、すぐに反発が聞こえてきそうだ。

けれどこれを見たらどうだろうか。





二十年余り、四季折々の牧草地の
景色を撮るのを楽しみにしてきた。
その景色が来年からメタリックな
ブラック一色に変わる。
メガソーラー電気事業者が県の認可を
受け、この眺めのいい丘陵の木を
大量に伐採している。国内有数の規模
になる予定だ。



(これが真っ黒になるかと思うと……)

誰もこれを止めようとはしていない。
数年前、電気事業者出て行けと書いた
旗がずらっと立ったときから心配して
いたのだが、旗はすぐになくなった。
そして事は着々と進められてきたという
ことだった。

7月に山道でイノシシの群れにあった
写真を掲載した際にダンプカーの出入りや
重機の作業音について少しだけ触れた。
あれからあっという間に牧草地を取り囲む
森の一角が丸裸にされた。
イノ君や野鳥たち、森のともだちの住み処
に人間界が押し寄せてきた。

「開発」か「破壊」か立場で変わる言葉。
村議会議事録によれば3年前から議題
に上り、環境問題について憂慮する
議員から行政に対して厳しい意見が
相次いでいたことがわかるが……。
誰も止められないようだ、今のところ。

原発事故からやがて10年が経つ。
その間、経営破綻した事業者がソーラー
パネルを放置したまま逃げてしまい
産業廃棄物の処理に困るとう事態に
なっているところもあるというのに。

飯舘村の木質バイオマス発電事業では
福島の樹皮を利用する。
放射能汚染の林産物を燃料とするなど
もってのほかだ。
農地そして山林に目をつけて金儲けを企む
それを行政が後押しする。
まるで火事場泥棒だが、周辺住民の意思を
無視したまま新たな環境破壊が進んでいる。

はげ山になったところに何もなければ
また木は生えることができる。
だが、無機物の有害な廃棄物が地肌を
覆っていれば荒れ地となるだけだ。

なんにもない、だけど自然がある。
それはなによりもすばらしい恵み
であるとは考えないのだろうか。
山林の地主が買収に応じる理由は
さまざまだろう。
くどくどとこの話をここに書くのは
よそう。



夏の終わり、いつものように草刈りを
してくれたS君が、バラを枯れ木と断定
して、根元から刈りとってしまった。

それから一ヶ月後、根元から新芽が出て
小さな葉をつけた。
2008年に小さな苗から植えたバラだ。
もう12歳過ぎたんだな。来春また
ピンクの小さな花がつくように
この若葉を大事にしよう。

毎年、何らかの間違いをしでかして
木や花を屠ってきた彼が木を伐るとき
何を思ったのか、それが気になった。

原生林を開拓しながら土地を広げ、
作物を耕せる場所にして人は生きてきた。
だからこそ、自然の恵みとその廻りを
人は学ぶこともしてきた。
出来合いのモノを金で買う暮らしに
なったからとて、自然は変わらず人に
恵みを与えてくれている。黙って。

再生できない物質を使いエネルギーを
作るという方法を選択するのは愚かな
過ちだと、まだ身にしみないのだろうか。
悔いないのだろうか。


コメント
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