山梨の桃

2022年08月24日 | 会社・仕事関係



私が44歳のときに、東京本社工場から山梨工場へ単身赴任になった。
その1年前に、本社工場で私の上司だった人が山梨工場に行っていたが、
その上司が、会社に来なくなったとかで、私が行くことになった。
その人は、東京本社工場に勤務していたときも、そういうことが何回かあった。
彼は私と同じ歳で独身だった。
そのときに私が勤務していた会社は、
半導体製造装置周辺のアッシャーハンドラーなどの、装置を製造している会社だった。
3年前に東京都小平市にあった会社と、埼玉県所沢市にあった私のいた会社が、
親会社の方針で合併させられた。
私の会社には、熊本、山梨、長野、埼玉、福島、東京に工場があり、社員は200名ほどいた。
20何回か転職してきた私としては、その会社が一番大きな会社だった。
山梨の工場は甲府市の隣の町にあり、釜無川(富士川)のほとりにあった。
昼休みに私は毎日、釜無川の土手に行き、ケーナを吹いていた。
川の向こうに富士山が見え、反対側には八ヶ岳があった。
工場のまわりを桃畑が囲んでいた。
(夏、桃畑の人に声かけて、桃を安く譲っていただいたことがあった)

その工場での私の仕事は、資材購買だった。
工場で生産するためのすべての部品を購入することです。
安く品質のいいものを仕入れなければならない。
電気部品などはメーカーで造られたものだから安心だが、
装置のフレームやいろいろな加工部品は、図面を渡して造ってもらわなければならない。
ある1台の装置に使う部品は、全部で5千万円ほどだった。
それぞれの部品にいろんな納期がかかる。
注文してから3日で入る電気部品もあるが、発注してから半年かかるものもあった。
それらを全部、製造が始まるときまでに集めなければならない。
営業が客先から受注して設計部で図面を起こし、
資材部に購入部品表が来て発注となって、製造部に部品を渡すまでの納期が3ヶ月、
というのが普通だが、ときには1ヶ月というときもある。
そのために資材部の私は、納期の長い部品はある程度の数を先行発注しておく。
ただし、その部品に変更などがあるとつらい。
なるべくそういうことがないように、
常日頃から設計の連中とは、コミュニケーションをとってなくてはならない。
毎週月曜日に営業部、設計部、カスタマーサービス部、製造部、資材部の
人間が集まって工程会議がある。
私の場合、製造部が製造するまでに部品を出庫しなければならないが、
100%部品を集めて製造部に渡すことは不可能だ。
そのことで毎週の工程会議でよく詰められていた。

1998年、私は1年という約束で山梨工場に赴任したのに、
本社工場がなくなり山梨に移転することになった。
その2年前ほどから会社の装置が売れなくなっていた。
私は帰るところがなくなるので、しかたなく会社を退職するしかなかった。
家族は山梨に引っ越す気はなかった。
しかし、それは正解だった。
その1年後、親会社は私のいた会社を売却してしまい、
そのあと私のいた会社は消えてしまった。

今日、山梨の桃をおいしく食べて、そんなことを思い出した。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 仙台育英 須江監督 | トップ | 泌尿器科外来 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。