初めての労働

2000年04月26日 | 会社・仕事関係

 昨日から、17歳のチリの女の子が私の職場に来た。
 細い三つ編みをすべての髪の毛にして、その先を色とりどりの小さなリボン
で結んでいる。典型的なインディオの顔立ちをしていて、ちょっと小太りで、
笑顔の可愛いコだ。日本に来て4年、そこそこ日本語は分かるという。
 息子より年下だと思うと、なんか複雑な気持ちです。
 今日の午後、女性のリーダー的な存在のYさんに午後の予定を話に行くと、
「チリのあのコ、疲れたのか机に寄りかかっているって隣のAちゃんがいいに
来たから、R(ペルーの女性)に仕事するようにいってもらったの。初めて仕
事したようなんだけど、ああいうことじゃ辞めさせたほうがいいですね」
 という。
 ここの仕事は1日中立ち仕事です。それに枚数を上げるには、かなりハード
な労働だ。あのあどけない彼女にはキツイな、と思った。しかし、立場上私も
無視できない。
「おれからも、あのコにいっときます」
 と、Yさんにいってその場を去ったが、さてどういおうと考えた。
 10分ほど重い台車を動かし整理しながら、心の中でうだうだ考えた。
(ええい、何悩んでんだ、かっこつけたってはじまんない)
 そういう結論で、彼女の作業台に行った。
「M、仕事キツイ?」
「………」
 振り向いた彼女は、困ったように笑うだけだった。
「1日中立ってるの、疲れるだろう」
「………」
「お金を稼ぐのは大変だよね。でも、みんなそうしてるんだ。Mもがんばれ。
慣れれば平気になるよ。がんばれよ」
 それだけいって、隣のAさんのところに行った。
「ここは、17歳の女の子が初めてする仕事じゃないよな」
「私、昔の自分思い出しちゃった」
「どんな」
 彼女は24歳、今週で会社を辞める。辞めることになったいきさつを九想話
に書こうと思いながらまだ書かないでいる。10人の男のうち、9人は可愛い
と思い、5人は恋人にしたいと熱望するような女の子だ。気の強いコなので4
人は尻込みすると予想する。
「私もこの仕事を初めてしたとき、疲れちゃって机に座ってて怒られたことが
あったの。分かるな、あのコの気持ち」
「へぇー、Aさんにもそんなことあったんだ。ここに来て、もう何年だっけ」
「4年です」
「Aさんもあと3日か。寂しくなるな」
「そんなことないでしょ」
 と、可愛い顔でいう。私が若かったら絶対彼女に恋をしていただろう。
 隣を振り返ると、チリのあのコは、細い三つ編みを両頬に垂らして、一所懸
命仕事をしていた。

コメント
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