どうしてこんな映画を『アバウト・シュミット』や『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のアレクサンダー・ペインが撮るのだろうか、と疑問に感じた。彼がメジャーの娯楽大作映画を手掛ける。しかも、ファミリー向けのSF映画だ。主演はマット・デイモン。人間が17センチになって生活する世界の話、なんて。
だが映画を見ていろんなことに納得する。これは確かに彼の映画なのだ。まるでメジ . . . 本文を読む
神原さんにはめずらしい再演ものだ。この3月で閉鎖されるザ・九条の閉幕プログラムの一環としての1本。彼女が敢えてこの作品をここに持ってきた意図は明白だ。終わっていくことへの最大限の拍手を送る。死は負けではない。生きたことの証だ。同じように小屋を閉めるのも、敗北ではない。たった5年間ではなく、5年もの時間を劇場として生きたこと。そのことへの最大限の賛辞を込めて、この作品を贈る。
ザ・ . . . 本文を読む
とてもつらい話だ。傷みと向き合えない。一度はここから逃げ出したのに、再び戻らなくてはならなくなる。兄の死によって、ひとりになった甥っ子の後見人に指名される。忌まわしい記憶しかないマンチェスターに帰る。彼に何があったのかは、なかなか明らかにはならない。前半はそこが明確にならないまま、話が進行していく。ひたすら目の前の現実から逃げようとする彼の姿を追いかける。短い描写でインサートされる . . . 本文を読む
ついに南田信吉作、演出作品の登場である。彼が大阪新撰組の座長に就任してから、幾星霜、待ちに待った真打ち登場である。なんて、いうのは嘘だ。そんな気合いの入ったものではなく、(要するに、渾身の力作ではなく、)肩の力の抜けた小さな作品を彼が提示するのがうれしい。それは自信のなさではなく、大人の余裕だと思う。アトリエでの公演というのもいい。でも番外編ではなく、劇団としての本公演だ。まぁ、そ . . . 本文を読む
ザ・九条のオーナーである林田鉄による私小説をリーディーング・ドラマとして舞台化した。不慮の事故で亡くなった彼の妻を描いたノンフィクションである。ラストの妻への手紙の部分は林田さん自身が読む。そうすることで彼が彼自身を演じていることになる。
あみゅーずによるリーディングは小説を役者たちのアンサンブルにより見事に立体化する職人芸の域に達しており定評があるのだが、今回は . . . 本文を読む
大竹野の狂気が影を潜め、とてもクールなタッチの作品に仕上がっている。演出の土橋淳志のアプローチは間違いではない。ただ、役者の芝居にばらつきがあり、演出の伝えたい微妙なニュアンスが伝わりきらない恨みが残る。感情的になることなく、描かれる現実を冷静に丁寧に見せていく。兄と弟を演じた関川佑一と柴埼辰治のパートは素晴らしいのだけど、全体のアンサンブルはうまくいってない。
台本にも問題があ . . . 本文を読む