とてもつらい話だ。傷みと向き合えない。一度はここから逃げ出したのに、再び戻らなくてはならなくなる。兄の死によって、ひとりになった甥っ子の後見人に指名される。忌まわしい記憶しかないマンチェスターに帰る。彼に何があったのかは、なかなか明らかにはならない。前半はそこが明確にならないまま、話が進行していく。ひたすら目の前の現実から逃げようとする彼の姿を追いかける。短い描写でインサートされる過去。よくやく明らかになる。
火事によって、3人の子どもたちを死なせたことがわかった後も、ひたすらつらい想いから逃げることばかりが描かれる。それだけで2時間17分が終始する。ケイシー・アフレックの暗い表情とずっとつきあい続ける。簡単な出口なんか用意されていない。しかし、ほんの少し、前を向いていくことが、提示されるラストにはほっとさせられる。
何度となく挿入される短い回想シーンによって少しずつ彼の過去が見えてくる。唐突に何度となく前後する時間の中で、それでもストーリーは遅々として進まない。死んだ兄の本当の想い、甥っ子の気持ち、別れた妻との再会。それでも前に進めないもどかしさ・長い長いトンネルのなかで、ずっと居続ける息苦しさ。それととことん付き合いさせられる。傑作なのだが、ちょっとした覚悟のいる映画である。