白くて太くて大きな木が舞台の中央に、どん、とある。そして、そのまわりに3つのベンチがあるだけ。2時間の芝居はフラットでなだらかな曲線を示す。変わらないのに、少しずつ変わっていく彼らの想いが、静かな会話劇として綴られる。
とてもストレートで気持ちのいい芝居。言いたいことが直で伝わってくる。もちろんここには明確な答えなんてない。そんなもの、どこにもないかもしれない。長い時間をかけて、少しずつ見えてくるもの。樹齢1000年の木が応えてくれるわけでもない。だが、その木の下にたたずみ、見上げる。その時、何かが見えてくる。
ほんの少し立ち止まり、たたずむだけでいい。それだけで何かが変わる。巨木を見上げる。地表に出た根の上に立ち、足の下にその木を感じる。心を病んだ人たちが、それぞれ自分の今を心に秘めながら巨木と向き合い、言葉を交わし合う。言葉と言葉は上手くかみ合わないけど、少しずつ時間を重ねていくうちに何かが見えてくる。みんながみんな別々の想いを秘めて同じこの場所にいる。そんな彼らのすべてのドラマの終わりを象徴するように、劇の最後で姉と妹はようやくここで再会する。長い時間がかかっても構わないから、ゆっくりわかり合えたならいい。そんな想いを抱かせてくれる。心に沁みる一品である。