『八日目の蝉』の成島出監督が再び幼子を主人公にした映画に挑む。前回も子役が主役の2人を完全に凌駕してしまう凄さで圧倒したのだが、今回の少年も前回以上に凄い。母親から虐待されてきた4歳児である。彼は人とのコミュニケーションが取れないし、満足にしゃべることもできない。そんな少年の面倒を見ることになる中年男を佐藤浩市が演じる。この2人の交流を中心にして、佐藤が50歳にして出来た新しい友達(同い年!)、西村雅彦。ひそかに想いを寄せる女性、吉瀬美智子、というのがメインキャスト。この4人がパキスタンのフンザに行く。
人生の終盤戦に突入して、もういろんなことを諦め始めてきた男が、再び生きる望みを取り戻す。自分が誰かに求められている。自分もまた、求めていることに気付いた時、人は心から生きたいと願うようになる。大したことではない。でも、それって、凄いことだ。このささやかなお話はとても丁寧にそんな彼らの心情を細やかな心の襞までも描きとって、見せてくれる。もう若くはないし、人生に疲れてしまっている。だけど、まだ、夢を諦めるべきではないし、諦めるには早すぎる。50歳という年齢の微妙な問題を背後に持ち、そこにとどまらず普遍的な心情に至るドラマが綴られていく。
4人で旅することで、もう一度生きていこうと思う。美しい風景を見て、人と出会い、失くしかけていたものを取り戻す。こんなのは、きれいごとでしかないかもしれない。パキスタンの砂漠や高原で暮らす人たちの生活はとても大変だろうし、決して豊かとは言えまい。しかし、4人はそこで癒された。それは事実だ。そして、もう一度自分たちの場所に戻って、頑張ってみようと思う。こんなふうに書くと、なんだか安直で単純そうな映画に見えるだろう。しかし、実際はそうではない。彼らは、いくつもの困難を抱えて、そのひとつひとつとこれから向き合う。4歳児を養子として迎え、50歳になって、そこから新しい家族を作る。それだけでも、簡単なことではない。仕事のほうも、好きでやってきたはずなのに、会社は当座の業績を上げることばかりに目を向けて、自分たちの仕事にプライドなんて持っていない。だが、そこにどんな困難が待ち受けていようとも、諦めないで、一歩ずつ前進していくべきだろう。自分を信じて、地道に努力するしかない。道はきっと開けると信じて。
みんな勝手な奴らばかりだ。でも、それぞれ必死になって生きている。そのことを認めたうえで、自分に出来ることに取り組む。こんなありきたりなことを書けるくらいに、この映画はよく出来ているのだ。ストレートなメッセージを真摯な描写を通して見せるからだ。この映画は信じられる。
少年の母親役の小池栄子がすごい。あのとんでもない女の内に秘めたリアルが、この映画を支える。それは彼女の夫で、2年間血の繋がっていない少年をひとりで育てた の勝手にも通じる。彼らは自分のことしか見えないでいる。人の気持ちなんて考えない。だから、平気で子供を棄てることができる。でも、彼らなりに精いっぱいやっているつもりで、自分は悪くはないと信じているのだ。
誰にも心を開かなかった少年が、彼を助けようとする人たちに出会って、少しずつ、心を開いていこうと努力する。その姿がいじらしい。自分を守る大人に媚びたりはしない。でも、不安は拭い去れない。優しくされればされるほど、怖い。一見無表情のままの彼の心の震えまでもが、伝わってくる。これはそんな映画なのだ。
人生の終盤戦に突入して、もういろんなことを諦め始めてきた男が、再び生きる望みを取り戻す。自分が誰かに求められている。自分もまた、求めていることに気付いた時、人は心から生きたいと願うようになる。大したことではない。でも、それって、凄いことだ。このささやかなお話はとても丁寧にそんな彼らの心情を細やかな心の襞までも描きとって、見せてくれる。もう若くはないし、人生に疲れてしまっている。だけど、まだ、夢を諦めるべきではないし、諦めるには早すぎる。50歳という年齢の微妙な問題を背後に持ち、そこにとどまらず普遍的な心情に至るドラマが綴られていく。
4人で旅することで、もう一度生きていこうと思う。美しい風景を見て、人と出会い、失くしかけていたものを取り戻す。こんなのは、きれいごとでしかないかもしれない。パキスタンの砂漠や高原で暮らす人たちの生活はとても大変だろうし、決して豊かとは言えまい。しかし、4人はそこで癒された。それは事実だ。そして、もう一度自分たちの場所に戻って、頑張ってみようと思う。こんなふうに書くと、なんだか安直で単純そうな映画に見えるだろう。しかし、実際はそうではない。彼らは、いくつもの困難を抱えて、そのひとつひとつとこれから向き合う。4歳児を養子として迎え、50歳になって、そこから新しい家族を作る。それだけでも、簡単なことではない。仕事のほうも、好きでやってきたはずなのに、会社は当座の業績を上げることばかりに目を向けて、自分たちの仕事にプライドなんて持っていない。だが、そこにどんな困難が待ち受けていようとも、諦めないで、一歩ずつ前進していくべきだろう。自分を信じて、地道に努力するしかない。道はきっと開けると信じて。
みんな勝手な奴らばかりだ。でも、それぞれ必死になって生きている。そのことを認めたうえで、自分に出来ることに取り組む。こんなありきたりなことを書けるくらいに、この映画はよく出来ているのだ。ストレートなメッセージを真摯な描写を通して見せるからだ。この映画は信じられる。
少年の母親役の小池栄子がすごい。あのとんでもない女の内に秘めたリアルが、この映画を支える。それは彼女の夫で、2年間血の繋がっていない少年をひとりで育てた の勝手にも通じる。彼らは自分のことしか見えないでいる。人の気持ちなんて考えない。だから、平気で子供を棄てることができる。でも、彼らなりに精いっぱいやっているつもりで、自分は悪くはないと信じているのだ。
誰にも心を開かなかった少年が、彼を助けようとする人たちに出会って、少しずつ、心を開いていこうと努力する。その姿がいじらしい。自分を守る大人に媚びたりはしない。でも、不安は拭い去れない。優しくされればされるほど、怖い。一見無表情のままの彼の心の震えまでもが、伝わってくる。これはそんな映画なのだ。