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映画・演劇のレビュー

ぬいぐるみハンター『ポテサラ パニック ピクニック パ-ティー』

2013-02-21 22:09:38 | 演劇
 これが大阪初進出になる(らしい)ぬいぐるみハンターをもちろん初めて見る。これは昨年東京では『くじらのおなか』のタイトルで上演された彼らの最新作。石田1967さんのセレクトによる今回の東京発LINX’は、先にも書いたように1時間超えの中編2本立。今までの20分から30分という上演時間では不可能だった各劇団の本格公演がこの尺なら可能となる。ショーケースという従来のスタンスは継承しながら、単なる予告編ではなく、本公演に迫るものが、提示されるのがいい。このパターンで、大阪版ということもこれからは可能なのではないか。ただし、大阪の劇団の場合は、自分たちで公演できるから、リンクスが援助してわざわざ本公演スタイルを持ち込む必要はないだろうけど。

 さて、本題のぬいぐるみハンターである。このなんともゆるいタッチのコメディーは、東京では受けるのかもしれないが、大阪では難しいのではないか。あまりに単純で、あっさりしていて、物足りない。でも、こういうタッチを作り手が意図しているのだから、そこを否定すると、意味はない。

 帝京大学ピクニック部の活動を描く。もちろん、そんなクラブはないし、その架空の部活動をさらりと、見せて笑わせるだけ。(でも、実名で大学出していいのか?)ドタバタではなく、けっこうシリアスで、でも、おばかな話をたわいなく見せていく。1時間5分という上演時間にぴったりと収まる内容で、当たり障りもなく、楽しい。清潔で、おしゃれで、何のオチもなく、楽しい。本当にたわいない。

 もっと何か、従来の演劇にはない新しいものを、期待したのだが、そんな気負いは、彼らにはさらさらない。役者たちも毒がなく、さわやか系。唯一、神戸アキコさんが鉛乃文檎の武田操美みたいな怪優で、彼女が4人のピクニック部の面々によるドラマの背景としてマイクを持って歌うシーンがおかしい。でも、それだって芝居の流れを断ち切るほどの迷惑はかけない。ほどほどで、邪魔はしない。節度をわきまえる。その趣味の良さが彼らの魅力なのかもしれない。毒、というほどではない毒。さりげなく盛り込まれる。でも、それがこんなにもたわいなくていいのだろうか。毒のはずが、これでは毒にも薬にもならない。


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