3・11以降、震災をテーマにした芝居がたくさん作られた。最初は恐る恐るだった。だが、1年が過ぎたころからだろうか。急に大量に出回る。言いたいことはそれぞれたくさんあるのだろう。それはいいことだと思う。だが、だんだんうんざりしてきたことも事実だ。作り手の本気が見えないものもあった。そんな中の本作である。
ここまで正攻法で、真正面から、描くものは稀だろう。しかも、ここまでストレートに突き詰めてく . . . 本文を読む
この小さな芝居をウイングフィールドで青い鳥が演る、ということに何とも言い難い感慨を憶える。僕が初めて青い鳥を見たのはオレンジルームの『夏の思い出』だ。あれからもう30年くらいが経つ(と、思う)。その後、90年代半ばまで、大阪で上演された青い鳥はすべて見てきた。あの頃一番好きな劇団だった。
もちろん、今も大好きだけど、今では時々しか見ない。僕の中で小劇場演劇は90年代で終わっているみたいだ。も . . . 本文を読む
病院の屋上を舞台にして、そこを訪れる入院患者たち、お見舞いにやってきた人々。病室の緊張から解放されて、身も心も休ませる場所。ここでは何も考えない。遠くに海が見える。見上げると空がある。ただ、ここにいる。ここには白いシーツがたくさん干されてあり、彼らはその間を抜けて、ここにくる。
この芝居は、そんな彼らの関係性について、描くことが目的なのではない。彼らは、ただここにいて、そこで交わす何気ないい . . . 本文を読む
昨年、原作を読んだとき、これはとても映画向きの素材だな、と思った。小説としてはいささか物足りないが、映画にすれば、ここには不在のつや(艶)という女を見事に描くことが可能だ。しかも、これを行定勲監督が映画化すると聞いたとき、すごい傑作が生まれるのではないか、と歓喜した。彼が『バレード』『女たちは2度遊ぶ』に続く新作に、この小説を選ぶのはとても自然な流れだ。
これは、ものすごくたくさんの人物が交 . . . 本文を読む