習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

コトリ会議『彗星がみたかたまりの夢』

2009-01-11 19:24:51 | 演劇
 これはおもしろい。意外性のあるストーリー展開は全く先を読ませない。と、いうか、めちゃくちゃな展開で、これでは何が飛び出してきてもおかしくない。ストーリーという骨太なものがあるわけではない。思いつきでしかないんではないか、というくらいに、話はとんでもない方向に向かっていく。夢の論理のようなものに貫かれていて、もう、作者のイマジネーションに付き合うしかない。短いシーンで、話はいきなり途切れて、別のシ . . . 本文を読む
コメント

ミジンコターボ『カレルチャペックの砦』

2009-01-11 17:45:47 | 演劇
 2時間10分の大作である。こういうタイプのエンタメ芝居は、もともとあまり得意ではない。だから少し辛口になるこもしれないが、ご容赦願いたい。  まず、最初から最後まで音楽鳴りっ放しで、うるさいし、科白も聞き取りにくいのが気になる。さらには派手な見せ場がいっぱいあるように見えて、見せ方が一本調子なのであまり派手にはならない。単調すぎるのだ。これではダンスを中心とした見せ場なのに、そんなシーンが続く . . . 本文を読む
コメント

渡辺容子『イン・バラダイス』

2009-01-11 17:11:42 | その他
 パチンコの興ずる女たちを通して、失踪した(実は、自殺した)パチンコ仲間である永遠子(トワコと読ませる。もちろん仮名)の謎の死に迫っていく。彼女がなぜ死んだのか。主人公は死んでしまった恋人とそっくりの男に惹かれて、彼女の死の理由を探っていくことになる。彼は永遠子の兄で彼女の行方を捜しているらしい。だが、本当は彼は永遠子のもと夫で、彼女の死の理由を知りたい。てな、感じで続々といろんな事実が明かされる . . . 本文を読む
コメント

プレイバック② 【1987年】

2009-01-07 22:36:07 | 映画
 1987年は映画292本。芝居47本。本145冊。この頃はなぜかマンガもよく読んでいてその記録も残っていた。(145冊にはマンガは当然含まない)  芝居は、まず、1月の太陽族による如月小春『家、世の果ての・・・』とミュージアム原始願望『ロング・トール』が記憶に残っている。  もしベスト・テンを選ぶのならば、4月の岸田事務所+楽天団『宵待草』(もちろん岸田理生・作)5月、9月、300『オ-ルド . . . 本文を読む
コメント

『ラースと、その彼女』

2009-01-07 15:35:12 | 映画
 今年、一番の映画に、1年の最初に出逢ってしまった。まぁ、本当は去年の最後に見るつもりの映画だったのだが、新年に取って置いてよかった。気持ちよく1年のスタートを切ることができたからだ。  この映画の驚きは、人形(リアルドール)を生きているように扱う変態男の話だからではない。孤独な青年のことを、まわりの人たちが心から大切に思い、彼が信じることをみんなも信じるところから起こる奇跡の物語をとてもリアル . . . 本文を読む
コメント

『ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』

2009-01-07 15:33:55 | 映画
 2本の実写版映画化の後を受けて、ついに劇場用長編アニメーションとして初めて鬼太郎がスクリーンの登場する。正直言ってなんの期待もしなかった。なんで今更、という気すらした。いくらTVで新シリーズが公開されている(んでしょ?)とはいえ、お正月映画として東映アニメーション(東映動画とはもう言わないんですよね?)が映画化する意味があるのか、疑問だった。  だが、映画を見ているうちにそんな危惧は吹っ飛んだ . . . 本文を読む
コメント

椎名誠『ひとつ目女』

2009-01-07 15:32:15 | その他
 久々にシーナワールド全開の長編小説だ。いつもながらの廃墟と化した世界、そこをサバイバルする一行の冒険が描かれる。わけのわからない生き物がうようよいる世界。『アドバード』や『水域』『武装島田倉庫』という傑作を連打していた頃のシーナさんに戻って、骨太な世界が描かれる。  ストーリーは取り止めがない。ラストのあっけなさは、お話を期待した読者を裏切ることであろう。だが、椎名さんが描きたかったのは終末の . . . 本文を読む
コメント

『アイム・ノット・ゼア』

2009-01-05 20:45:58 | 映画
 トッド・ヘインズの新作はボブ・ディランの生涯を描く2時間16分に及ぶ大作だ。なんと6人の役者たちがボブ・ディランの様々な側面を見せる。ケイト・ブランシェットからリチャード・ギアまで、男だけでなく女も含み、しかも黒人の少年も混じっているのだ。大胆というか、いいかげんと言うか。いったいこの映画は何なんだ、と思う。  この実験的な手法は確かに面白いが、とてもわかりにくい。ボブ・ディランについて何の興 . . . 本文を読む
コメント

『ユゴ 大統領有故』

2009-01-04 22:38:13 | 映画
 パク・チョンヒ(朴正煕)大統領暗殺事件の顛末を描く衝撃の映画のはずが、なんだか緩いバカ映画で驚く。シリアスだと思っていたのに、コメディータッチなのだ。この素材を扱ってこの見せ方はないだろ、とあきれた。だが、監督のイム・サンスはわざとこういう描写の選択をしたようだ。だが、見終えてなぜ?という疑問が残る。こうすることで描きたかったものが、僕には見えなかった。その結果、ただ、もどかしさしか残らない。 . . . 本文を読む
コメント

喜多ふあり『けちゃっぷ』

2009-01-04 20:08:38 | その他
 これがもう1冊の文藝賞受賞作。つまらないことはない。それどころか、おもしろい。もう1冊(『おひるのたびにさようなら』)も面白かったから、今回の文藝賞凄いよ、なんて言ってもよい。だが、なんだか軽すぎ。こんな軽~いだけの小説でいいのか?保坂和志はほんとうにこの2作を受賞作として認めたのか?どうなんだ!なんていい寄りたくなる。(他の3人はどうでもいいです。)  『引きこもり女子HIROは全く口をきか . . . 本文を読む
コメント

安戸悠太『おひるのたびにさようなら』

2009-01-04 19:44:20 | その他
 今回の文藝賞受賞作を連続で2冊読んだ。選考委員の趣味で選んだような際物ばかりだ。もう少しちゃんとした文学作品を選びましょう。これはただの色物ですよ。ワン・アイデアだけで引っ張るから一応長編なのに、へたな短編を読んだ気分だ。話に深みがなく、あっけない。面白いだけ。それがよくないというわけではない。だが、読後の余韻とかない。まぁ、これはそういうものなのだ、と言われたら反論はしないけど。  無音のT . . . 本文を読む
コメント

『ネクスト NEXT』

2009-01-04 18:59:13 | 映画
 フィリップ・K・ディック原作だと言うことは、どうでもよろしい。あの人が出ている映画は付帯条件なんかすべて吹っ飛ばしてしまう。そう、これはあのニコラス・ケイジさまの映画なのだ。あの濃い人は映画からすべてを奪い去る。何に出てもすべてニコラス映画に変えてくれる。あれだけのオーラを持つ役者は世界広しと言えども他に誰もいない。  今回も彼はやってくれた。見ていて笑える。彼が本気になればなるほど映画は暴走 . . . 本文を読む
コメント

田中慎弥『神様のいない日本シリーズ』

2009-01-03 09:11:28 | その他
 1986年、日本シリーズで奇跡が起きる。西武ライオンズが3連敗から4連勝の大逆転優勝を果たしたのだ。その時、中学生だった彼は文化祭のために、毎日学校で劇の練習をしていた。ベケットの『ゴドーを待ちながら』である。憧れの同級生だった少女と2人、エストラゴンとヴラジーミルを演じる。  田中慎弥の小説は初めてだ。なんだか読みにくい。それはモノローグだけで綴られていくからだ。父親が息子に、かって子どもだ . . . 本文を読む
コメント

『レッド・バルーン』

2009-01-03 08:30:29 | 映画
 「ホウ・シャオシェン」と書くより『侯 孝賢』と書くほうがピンとくる。最近はカタカナ表記が主流になり、漢字では書かないようだが。さて、その侯孝賢監督の最新作はパリを舞台にした作品だ。  アルベール・ラモレスの『赤い風船』へのオマージュである。小学校の頃、学校の体育館でこの映画を見せられた。あの頃は、ほんとうによく様々な映画を体育館で見た。そういう意味では実にいい学校だった。これは印象的な映画で、 . . . 本文を読む
コメント

プレイバック① 【1991年】

2009-01-02 11:49:02 | その他
 ノートを見ながら、今から18年前のことを振り返って見よう。  この年、見た映画はなんと344本。すごいとしか言いようがない。芝居は60本。本は156冊。ビデオ(DVDは当然ない)は51本である。今はあまり行かなくなったが、当時は写真展、とか美術展とかもよく行っていた。この年は74回。  アートベスト10なんてのも簡単に出来てしまう。3月のCAPA&CAPA展(三越アート・フォーラム)はすばら . . . 本文を読む
コメント