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映画・演劇のレビュー

安戸悠太『おひるのたびにさようなら』

2009-01-04 19:44:20 | その他
 今回の文藝賞受賞作を連続で2冊読んだ。選考委員の趣味で選んだような際物ばかりだ。もう少しちゃんとした文学作品を選びましょう。これはただの色物ですよ。ワン・アイデアだけで引っ張るから一応長編なのに、へたな短編を読んだ気分だ。話に深みがなく、あっけない。面白いだけ。それがよくないというわけではない。だが、読後の余韻とかない。まぁ、これはそういうものなのだ、と言われたら反論はしないけど。

 無音のTVの昼ドラを毎日見続ける男。彼は会社の2人の同僚の女性から毎日近所の耳鼻咽喉科の待合室のTVを見るように強要されている。見た後2人にストーリーを説明するためだ。でもそこでは音が消されているから、画面を見て話を想像するしかない。彼女たちは彼の話を聞き、その後家に帰ってから録画したTVで確認するのを楽しみにしている。これはただのゲームだ。

 この3人の話と、現実のそのTVドラマの世界。さらにはそのドラマの主人公を演じる女性のこの安直なドラマへの違和感。この3つの話が交錯する。これら3つのドラマが最後にひとつになる、とかいうのではない。思いつきのような小説だから、ただそれだけだ。ラストもこれをどんでん返しだ、とは思わない。これは安物のTVがよくやる安易なオチでしかない。わざとチープな印象を与えるための戦略なのかもしれないが、そんなことしなくてもこの小説は充分にチープです。

 この設定から何を描こうとするのか、そこが小説家の腕の見せ所ではないか。なのに、何もないまま終わる。あかんわ、これ。せっかくのアイデアなのにもったいない。

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