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映画・演劇のレビュー

あみゅーず・とらいあんぐる『ゆるりゆらり』

2016-07-08 07:14:16 | 演劇

夏の恒例となるあみゅーずによる「しゃば・ダバ。だぁ リーディング」。なんと今回で6回目の夏になる。本公演を20年以上連続11月にこなし、それだけでも凄いことなのに、たまたまイレギュラーで始めた(たぶん)リーディングをこんなにも律儀に毎年続け、それもまた恒例のものにしてしまうなんて、なかなか出来ることではない。

条さんと笠嶋さんは決してムリをしているわけではない。とても自然体で、楽しそうに公演を積み上げていくのだ。(いや、もしかしたら、かなり無理しているのかも。でなくては、こんなにもコンスタントに公演を続けられない。でも、そんなこと、おくびにも出さない。)

今回もいつものようにザ・九条でワンドリンクを(このサービスも素敵だ)片手に4つのお話を見る。タイトルにあるように今回のコンセプトは「のんびりと、ほんのちょっと不思議な時間を楽しむ」こと。当日のパンフには「今年こそは妖怪モノ、怪奇モノをと思いながら、やんわりと不思議ものになりました」とある。

 

オープニングは江国香織の童話のような短編。(いつか、ずっと昔)さらりと夏の夜の不思議を提示して今回の姿勢を伝える作品。生まれ変わりを繰り返しても、いつだって、幸せだったと思う。幼なじみのふたりが結婚を控えたある日、デートする。それだけのお話。

 

今回の4本はいずれも僕のお気に入りの作家たちの作品ばかりで、たまたま4人ともほぼ全作品を読んでいるから、今回取り上げた4本の(川上弘美が2本なので5本かぁ)短編もちゃんと記憶にあった。丁寧に構成・演出がなされていて、うれしい。7人の読み手(キャスト)が絶妙な配置でアンサンブルもすばらしい。いずれも文句のない出来だが、川上弘美の『神様』『草上の昼食』を演じた笠嶋さんと上畑さんのコンビが素晴らしい。理想的なキャスティングだ。笠嶋さんの優しさと、上畑さんの優しさが重なり「ひと」と「くま」との、切ない恋のドラマを現出させた。ふたりの指し示す優しさはそれぞれの持つ微妙な違いがすばらしい。だから、どれだけ好き同士であっても、ふたりは結ばれない。ただの散歩なのだけど、それがどれだけふたりにとって、大切なものになるか。

加納朋子の『バルタン最期の日』の微笑ましい家庭劇もいいし、切なさの極み、大人のドラマ西加奈子『トロフィワイフ』もすばらしい。今回の4作品の最後はちゃんと条さんが締める、というのも当然のことだけど、いい。決して贅をこらしたゴージャスな舞台ではないけど、それどころか、表面的には簡単でチープな公演なのだけど、とんでもなく贅沢な時間を過ごすことができた。うれしい。


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