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映画・演劇のレビュー

『ドッグマン』

2024-07-22 13:01:00 | 映画

これは劇場公開時に見たかった映画だけど、すぐに劇場から消えてしまったから見逃してしまっていた。今の時代は見たい映画は、公開から1週間で見ないと見れなくなる(可能性が高い)のが現実。(余談だが、この映画の監督であるベッソンの傑作『グレート・ブルー』は極端だけど、たった1週間で打ち切られた。僕はあの時たまたま難波の東宝敷島で見ていたから大きな劇場で見れた)

3月公開していたこの映画がさっそくAmazonで配信がスタート。これはうれしい。実は公開時、少し躊躇してしまった。これはリュック・ベッソン監督作品である。今の彼の映画は好きじゃない。彼の作る商業映画はつまらない。だけど、初期の映画は大好きだった。あの頃の彼を忘れられないから、今でも期待してしまう。そして裏切られる。

だけど、今回は違う気がした。なんとなく。そして僕の予感は当たる。マリリン・モンロー(彼女の孤独に共感している)風の衣装とメイクを施した血だらけの容疑者ダグラス。彼の人生が描かれる。
 
なんとこれはあの『サブウェイ』や『グレート・ブルー』(僕は『グラン・ブルー』よりも、先に見たこともあるだろうが、こちらが好きだった)に匹敵する傑作だった。久々に彼らしい渾身の一作。僕は彼のこういう映画が見たかったのだ。
 
虐待の話から始まる。凄まじい父親からの暴力。目を覆う。そして、犬小屋から脱走するところからラストまで(話としては突っ込みどころは多々あるけど)緊張感が持続する。彼が犬と共に生活し彼らが(犬ね)彼を100%信頼する。そんな図式はリアルではないけど、この映画の世界ではファンタジーではなくこの映画としてのリアルを体現する。誰にも心を開くことなく生きてきた彼は拘留された今、精神科医との面談で初めて人に心を開く。
 
ドラッククイーンとして金曜日、週に一度だけ舞台に立ち一曲だけ歌う、それ以外は廃墟で犬たちと暮らす。そんな日々が続くとよかった。終盤の戦い(アクション)は仕方ない定番だが、その悲劇がこの寓話に相応しい。ラストはハッピーエンドとは言えないが、悪くはない。

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