創立50周年シリーズ第3弾である。今回は20年前に上演した作品をリメイクする。昭和41年という時間が舞台となる。高度成長期の日本で、やがて時代から取り残されることになる「おんぼろ下宿」が舞台となる。日本がどんどん豊かになる時代に、そんなこととはまるで無縁な人たちもいる。でも、彼らは彼らなりの夢を抱いている。
これは夢についてのお話だ。夢を語ることは難しい。いつの時代においても、夢は美しいけど、虚しい。夢は夢でしかないからだ。でも、それを実現した人もいる。
特撮の現場で働く名もない人たちのお話である。モデルとなるのは明らか円谷プロの『ウルトラマン』誕生なのだが、これはそんな煌びやかな成功譚ではない。これはささやかだけど、夢を追いかける人たちのドラマだ。やがて、消えていく夢のかけらを描く。そんなお話である。成功した人の自慢ではなく、失敗ばかりしながら、それでも、夢を見た貧しい人たちの群像劇として、このお話を立ち上げる。
確かに主人公は最後に新しいヒーロー物のTVドラマを提唱し、成功に導く。だけど、それだってはかない夢でしかないのかもしれない。そんな気分にさせられる作品なのだ。
芝居自体はとても丁寧に作られてあり(暗転がちょっと丁寧過ぎて長すぎるけど)、舞台美術もシンプルだけど、しっかり考えて作られてある。みんなが集まる共有スペースがいたずらに広いだけでスカスカなのもいい。たまたまかもしれないけど、これはこれでこの作品の意図をきちんと伝える。この空間が彼らとってとても心地のいい場所であることがわかる。
やがてここも取り壊されてしまい、この世の中から消えていくのだろう。そんな失われてしまったものへの郷愁がこの小さな作品の中には溢れている。主人公を演じた織田拓巳はまっすぐに立ち、真面目にしっかりしゃべる好青年を演じていて、そこも心地よい。