習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『童貞放浪記』

2010-06-26 23:03:23 | 映画
 あまり期待はしてなかったけれども、ここまでつまらないなんて意外だ。ソフトポルノとしてではなく、この題材をかなり本気で扱った映画だと思ったから、少し期待して、わざわざレンタルしてきて見たのに、こんなつまらない映画でしかないなんてショックだ。原作は安易な漫画ではなく、一応小説らしい。もしかしたら原作は面白いのかもしれないが、もう読む気はない。だいたいこのセンスのないタイトルをわざわざつけたところがこの作品の勘所だ。このタイトルを逆手に取った冒険が期待されたのだが、情けない。低予算映画なので、作りも緩いのは仕方ないとはいえ、シリアスな青春映画としてこの題材を取り上げるのは悪くないと思ったのだが。

 自意識過剰の30男、彼は東大卒(大学院も出ている)のエリートなのだが、なぜか今も童貞で、女性とつき合うことに対してコンプレックスを持っている。そんな男の恋物語だ。エリート意識と性的なコンプレックスの板挟みの中で悶々とした日々を送っている。ストリップに通ったり、風俗にも行ったりはするけど、一線を越えられない、という設定はつまらない。大学の後輩と恋仲になって初体験に及ぶというメインのお話自体もすごくつまらない。この素材の持つ可能性をこの映画はまるで生かすことなく、くだらないどうでもいいような映画にしてしまう。

 これならコメディータッチの普通のポルノのほうがまだましだろう。こんな映画にするために、このキワモノめいた題材を映画化するなんて、そんな行為に何の意味があるのか。作者の意図がまるでわからない。主役の山本浩司も今回はまるでダメで、だいたい東大卒の超エリートにはとても見えないし。この映画を見ていると、生きていること自体が暗くてつまらないことに見えてくる。そんな映画。とてもじゃないが誰にも勧められない。脚本が五反田団の前田司郎である。というか、彼は脚色、とある。他の人が書いた台本を彼がリライトしたようだ。なぜそんなことになったのかが気になる。ただ、どうせなら彼の監督もさせたならよかったのではないか。きっと彼なら面白い映画にする。

 素材としては悪くはないし、誰もが目を逸らしたくなるような題材に挑戦した心意気は買う。この大胆なタイトルも、ふざけているのではなく、敢えてこのタイトルでこの題材に向き合いたいという作者の強い姿勢だと思ったのだが、買い被りでしかなかった。小沼雄一監督作品。この人は初めてだ。


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