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映画・演劇のレビュー

『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』

2011-03-03 22:00:30 | 映画
 昨年『必死剣、鳥刺し』で、抑えに抑えた描写によって、時代劇に於いてもその才能を存分に発揮した平山幸秀監督が、今度は戦争映画に挑戦する。タイのジャングルで何ヶ月もかけて撮影した超大作である。

 サイパン玉砕の後、500日にわたって米軍に抵抗を続けた大場大尉(竹野内豊)と彼の仲間たちの戦いを描く。これがつまらない映画になるはずがない、と思った。なのに、映画は後半になると、どんどん緊張感を失い、つまらない映画になっていく。見ていて、我が目を疑った。なんでこんなことになるのだろうか、と茫然となる。

 主役の竹野内豊を始めとして、キャスト陣はとても頑張っている。なのに、とてもつまらない。平山監督も淡々としたタッチで、この事実をきちんとみつめていこうとしている。だから、本当なら悪くなるはずがないのだ。まぁ、もちろん理由はないわけではない。

 視点が分散されたことで、描かれていることが、中途半端なものとなったからではないか、と思う。この映画はあくまでも、親日家の米軍大尉の目から見た大場と、日本人たちの姿を描く映画だったのだ。たとえそれがとんちんかんなものであったとしても、2年間日本で暮らし、彼らの姿を自分の目で見て、自分なりの理解を示すこの男が、彼の中にある理想像としての日本人であるストイックな大場大尉の姿を通して、本当の意味での「日本」と出会っていくまでが描かれたドラマなのである。

 なのに、主人公を大場の側に設定してしまったため、視点の定まらない表層的な映画になってしまったのだ。題材としては悪くはなかった。なのに、結果的には酷いことになった。かといって、主人公をアメリカ人にはできない。これはあくまでも日本映画でしかないからだ。そのへんが今回の問題点なのであろう。


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