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映画・演劇のレビュー

『釣りバカ日誌20』

2009-12-14 22:42:49 | 映画
 22年間で22本。ハマちゃん、スーさんの釣りバカシリーズがついに完結する。ファイナルのタイトルが『釣りバカ日誌20』。とても切りがいい。22本なのに、『20』というのはなぜか、と思うのはマニアではない。スペシャル版が2本あり、(しかも、その1本は時代劇!)それを本家のシリーズにはカウントしていないからである。

 寅さんシリーズの併映として、スタートし、その後1本立ちして、寅さん亡き後、日本映画のプログラム・ピクチャーの歴史の最期を飾ってきたこのシリーズとともに日本映画のひとつの歴史は幕を閉じることになる。もうこんなタイプの映画は2度と作られることはないだろう。

 たとえヒットシリーズが生まれたとしても、それは国民的支持を集めるプログラム・ピクチャーにはなるまい。人々の趣味は多様化し、みんなにアピールするものなんてもう作れなくなった。この釣りバカシリーズだって、寅さんのようにはならなかったことを見ても明らかだろう。松竹が威信をかけてなんとかここまで続けたが、興行的には苦しかったはずだ。それでもなんとか松竹の看板シリーズという意地のようなもので、ここまで続いた。

 さて、渥美清の死をもって、終わるしかなかった『男はつらいよ』とは違って、このシリーズはもっと軽やかに幕を閉じることが出来たのがうれしい。三国連太郎の死、だとか、ハマちゃんの定年退職とか、そういうのは、このシリーズには似合わない。

 とはいえ、このファイナルを見ながら、話は必ずしもノーテンキには弾まない。このシリーズの終焉の理由は、主役の2人の問題ではなく、時代の要請なのかも知れない。もう、こういう映画はこの時代には不要なものなのだ。というか、こういう映画に、映画としてのリアリティーがなくなったのかもしれない。

 本作は現実の世相を反映しながら、幾分重いタッチで展開していく。コメディーなのに、重くなってしまうのは、本来あるまじきことなのだが、はしゃいでばかりでは映画自体が成立しないのだ。それは、楽しいはずの釣りのシーンですらそうだ。クライマックスのイトウをハマちゃんが釣り上げる場面に、スーさんはいない。しかもラストに2人が並んで釣りをするシーンを敢えて作らなかった(作れなかった)そんなところにも、この作品の深い意図を感じるのはなんだか穿ちすぎか。

 スーさんが倒れて、入院して、という展開から、夢の中でハマちゃんが三途の川を渡るスーさんを引きとめることになるバカバカしい展開とか、あの怒濤のクライマックスには唖然とする。メチャクチャではないか。スーさん復活後の辞任の挨拶なんてのも、凄いが、その後にはなんとカーテンコールだ。

 ラストにカーテンコールがある、なんてのもびっくりだが、そこにはちゃんと退職した谷啓課長の姿があったのがうれしい。釣りバカ・ファミリーの歴史はこうして幕を閉じたのであった。

 

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1 コメント

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釣りバカ日誌20 ファイナル (ノブ)
2010-01-16 18:04:59
今日「釣りバカ ファイナル」観てきました。最後の釣り場が三途の川というのがオシャレでした。それでは失礼致します。
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