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映画・演劇のレビュー

石田衣良『5年3組リョウタ組』

2011-06-07 22:11:15 | その他
 事件発生から数時間での対応であり、臨機応変にベストを尽くし、誠実な対応をすることで、みんなの不安を取り除き、現状のなかでの最善を可能とする。そういう判断力って、ものすごく大事なのではないか。この小説は学校現場での出来事を描いているが、そこにとどまらない。あらゆる局面で、人が人であるために何が必要なのかを教えてくれる。

 読みながら何度も涙ぐんでしまった。もともと涙もろいのだが、この小説は格別だ。良太先生の素直で素朴な性格が、染谷先生の冷静で、正確な対応と呼応して、2人でとんでもない状況を切り開いていく。そして、最高の答えを出してくれる。

 最後まで、読み終えて、とても清々しい気分になった。良太先生と一緒にテストなんか辞めて、海に行きたいと思った。でも、現実でこんなことをしては、スタンドプレイとして、処分される。普通ではありえないことだろう。しかし、小説の中でなら可能だ。というか、小説の中でなら、やるべきなのだ、と思った。現実では出来ないこともちゃんとやることで、現実なんか超えていくのだ。学校は大変だけど、とても楽しい。そんなことは、僕が誰よりも一番よく知っている。

 毎日、朝早くから学校に行き、夜遅くまでいる。家に帰ったら、疲れ果てて、ご飯、風呂、で寝るだけ。そして、目覚めたらすぐに学校に行く。土日は平日以上に忙しい。こんなことを続けていたら、きっと死ぬ。いつもそう思う。でも、楽しいから仕方ない。毎日1日中遊んでいる気分なのだ。安い給料で過労死しても、まるで気にもならないから。

 まぁ、自分のことなんか、どうでもいい。この良太先生を見ながら、こんなふうに純粋に子供たちと向き合えたならどれだけ素敵だろう、と思った。今の自分は毎日疲れすぎて、時々、手を抜く。特に小手先でもやれる授業と、メンバーがきちんとサポートしてくれるホームルームに関しては、かなり手抜きだ。(それじゃぁ、何をしているのか、と言われそうだが)クラブも時間が少ないから、思ったようにはいかない。なんだかストレスがたまる。あれもこれも、はとても無理だ。大体このブログを更新するような時間は、本当はどこにもない。最近は芝居も、映画もまるで見られない。なんとか無理矢理時間をやりくりしているけれど。

 この小説を通して、良太先生と彼のクラスの1年間を一緒に追いかけて、教師をしている、って凄く素敵なことだな、と改めて思った。まぁ、30年間、ずっとそう思ってきたけど。うちの2年7組もたぶん、リョウタ組に負けないくらいにいいクラスだと思う。いい子ばかりがいる。彼らは、担任の僕よりしっかりしている。ということで、うちのクラスはたぶん学年で一番いいクラスだ。というか、うちの学校は大阪で一番いい高校だと思うし。

 と、こんなことを書くくらいに、今はかなり疲れが溜まっている。だから、この小説を読んでよかった。これは一服の清涼剤だ。同じように頑張っている人を見ると、元気になれる。僕も頑張らなければ、と思う。



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