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映画・演劇のレビュー

『ラブコメ』

2011-06-05 22:22:32 | 映画
こういうTVドラマレベルの安上がりの映画(当然フイルム撮りもしていない)なのに、こんなにも素敵な作品に仕上がっている。これは思わぬ拾いものだ。パッケージングも安直で、どこをどうとったってただの安っぽい映画である。だが、作り手はこのB級感覚をとても大事にしている。この映画は、プログラム・ピクチャーであることで初めて可能となるスケールの「いい話」を、ちゃんと提示するのだ。そこには、ある種の志の高ささえ感じさせる。たまにはこんな映画を見たい、と思う。なんだかほっとする。肩肘張らず気楽に見られて、いい気分にさせられる、そんな映画、それがこの小品だ。

小さな話を小さいまま、でも、きちんと作る。主人公たちの気持ちに嘘がない。その一点は譲らない。身の丈にあった映画。これって簡単過ぎて、難しいのだ。安易と言えばこれ以上に安易なタイトルもないし、それに見合う安易な内容である。でも、この内容に、ここまで的確なタイトルもないだろう。シンプル・イズ・ベストである。

 2人の男の間で揺れる女心。しかも、彼女は男勝りで、今まで、男に縁がなかった。とても美人なのに。そんな彼女が1年11ヶ月振りで、男が出来る! しかも同時に2人。こういういかにも、な設定がこの映画にはぴったりなのだ。それをあざといものにはしない。

しかも、2人の男が、気の弱い幼なじみと、かっこいい2枚目。ここもあまりのパターン。そして、当然、最終的には、おきまりの選択をする。彼女は、気の弱い方と、つき合う。そんな2人を取り囲む個性的な人々。ちゃらい中年男(渡部篤郎)と、同じようにお気楽な若い女(北乃きい)の2人を中心にしたサブ・キャラが、主人公である2人の恋愛物語を盛り立てる。要するに、花屋さんの香里奈と、幼なじみのアニメドラマ脚本家(田中圭)が主人公。

究極のパターン映画。そこがこんなにも心地よい。新しいことなんか、ここにはどこにもない。どこにでもあるようなお話。それを丁寧に見せたなら、こんなにも素敵な映画になる。もちろんここに過剰な期待なんかはしないで欲しい。そんなご大層な映画ではないことはここまでで散々書いてあるはずだ。だから、なんとなく見て欲しい。すると、ほっこりできるはずだから。



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