
『花束みたいな恋をした』の脚本・坂元裕二と監督・土井裕泰が再タッグを組み、広瀬すず、杉咲花、清原果耶の3人を主演に迎え、強い絆で結ばれた3人の女性が織りなす日常と究極の“片思い”を描く友情物語。ネタバレになるけど、序盤でわかるからもうここに書く。
実は彼女たちは実は既に死んでいる。12年前の殺傷事件の犠牲者。当時8歳だった清原伽耶、9歳だった杉咲花、そしてたぶん10歳だった広瀬すず。あれから12年、伽耶も20歳になった、というところから映画は始まる。仲良く暮らしている3人の日々を丁寧に描くことから映画はスタートする。
まさかこれが幽霊たちの話だとは思わなかったから、驚く。3人は自然に人間世界で暮らしている。ちゃんと成長して、普通に暮らしている。ただ、人からは見えない。そこに確かにいるのに関わらず、誰も彼女たちの存在を知らない。それは『ベルリン愛の詩』の天使たちを想起させる。生きている人たちにはそこにいる彼女たちは見えない。彼女たちは生きている人たちに触れられないのに、生きている人たちは彼女たちにぶつかってくる。だから気をつけないと倒されてしまう。
12年前の無差別殺人の犠牲者になった3人。彼女たちはそれからの人生を自分たちだけで肩寄せ合って生きて(死んでいるけど)きた。3人だけで生きる時間が描かれる。
そしてラスト、あの日から心が死んでしまった男の子(横浜流星)への片思い。広瀬すずの想いが彼にちゃんと届くピアノ室のシーンが切ない。だから、続く合唱コンクールのシーンは幸せな気分になる。子どもたちと一緒に、彼のピアノ伴奏で3人は歌う。あの日出来なかったことを叶える。死んだ人たちはみんな生きている。こんなふうに僕たちを見守ってくれていると思うと元気になれる。