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映画・演劇のレビュー

『梅切らぬバカ』

2023-03-07 11:19:04 | 映画

これは1昨年劇場公開されていた作品だ。なんとたった1時間17分の映画だ。ミニシアターでひっそりと公開されていたけど、けっこうお客を集めてそれなりのロングランだったようだ。地味な佳作という感じだろうか。

そしてなんと僕にとっては(実は1967年の『濡れた逢びき』以来54年ぶりの映画主演作らしいので)『月曜日のユカ』以来の加賀まりこが主演映画で、だから気になっていたので見に行こうとは思っていたのだが、なんか踏ん切りがつかず結局行かなかった。ようやくNetflixでの配信が始まったので早速見たのだが、なんだか微妙だった。だから実はもうひと月近く前に見たにもかかわらずここに感想を書かずにいた。(つまらなかった映画はわざわざ書かずに忘れることにしているけど、これはつまらなかったわけではないのに放置していた)

悪い映画では断じてない。どちらかというと好きなタイプの映画だ。障害を持つ50歳になる息子役の塚地武雅も頑張っている。自然体で演じたとは言い難いけど、悪くはない。加賀まりこの母親は実に自然体でこの映画の中で生き生きしていた。無理がない。なのに、なんだか映画は微妙。

母ひとり、子ひとりの慎ましい暮らし。隣に引っ越ししてきた家族(渡辺いっけい演じる夫がいかにも、という芝居をする)とのささやかなやりとり。道路にまではみ出した梅を切るかどうかを巡るお話。この小さな映画らしいエピソードだ。過不足ない映画はそのままラストまで盛り上がりもなく綴られていき終わる。少しだけほっこりする。やはり悪くはない映画だ。でもなんだかとても物足りない。そこなのである問題は。破綻のなさが作品の力を削ぐ。まだ若い監督のデビュー作である。なのにこのお行儀のよさは何なんだろうか。しかも、それを自分のスタイルとしているわけではなく。(だいたいデビュー作でスタイルを確立しているとか、ありえないし)だから何度も書くようにこれは微妙なのだ。

知的障害者が共同生活を送るグループホームに息子を入れることにしたが、彼はホームを無断で脱走する。当然なじめない。今までの生活に慣れているからだ。ndjc出身の和島香太郎監督はそつがない。でも、なんだか何かが足りない。それは主演の二人の力で補う問題ではない。結論をどうこう言うのではない。家が一番とか、そんな安易な解決でもない。だけど、彼がこの先自立するために何が必要で彼がどこに向かうのか、さらには母親はその時何ができるのか、とか。このバランスのいい映画が破綻してもいいから、もう少し先へとお話を詰めてもよかったのではないだろうか。

 


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