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映画・演劇のレビュー

『ファミリー・ツリー』

2012-07-01 20:48:03 | 映画
踏んだり蹴ったりの現実と向き合うジョージ・クルーニー演じる中年男の家族再生への道のりが描かれる感動作。今年のアカデミー賞最有力候補と言われながら、惜しくも受賞を逃した。でも、わかる気がする。これをこの1年を代表する映画として認めるにはこれはあまりに線が細すぎた。もっと、強烈なインパクトが必要なのだ。今の時代にどうしても必要な強い意志のようなものが、ここにはない。(だが、『アーチィスト』にそれがあったかと、言われると、それもなんだかなぁ、とは思うが)

妻が事故で昏睡状態になる。残された子供たちと、自分。さらには、妻は自分に内緒で浮気していた。(当たり前かぁ! 公然の浮気なんか、なかなかしない)遺産相続で、広大な土地の売却問題が起きている。夢の島ハワイを舞台にして、夢ではない現実の重さがひしひしと迫ってくる。誠実に生きてきたつもりだった。仕事にも熱心で、妻のことも大好きで、子どもたちにもちゃんと愛情を抱いている。誰からも後ろ指を指されるようなことはしていない。そんな自分がどうして、こんな災難に遭わなければならないのか。

 でも、そんなふうに考えるのは間違いであろう。災難に会うのは、悪いことをした報いなんかではない。不可抗力である。そんなこと、バカではないのだから、彼にも分かっている。しかし、誰もが思うように、どうして、自分だけが、と考えてしまうのも、人情だろう。だが、そんなふうに考えた時点で、彼自身に問題があったのだ、と判断する。彼は自分勝手だった。妻の気持ちも、子どもたちのことも、まるでわかってないかったのだ。自分がこんなに頑張っているのだから、みんなも分かってくれているのだろう、だなんてひとり我点していた。妻の淋しさなんか、理解もしなかったのだ。彼女が浮気したのは、彼の無関心が原因だった。

とてもいい映画だと思う。今書いたようなことが、ちゃんと伝わるように作られてある。だが、それってただの予定調和でしかないのではないか。アレクサンダー・ペイン監督は、手堅くまとめている。だが、これだけではなんだか、もの足りないと感じたのも事実だ。




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