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映画・演劇のレビュー

『GANTZ  PERFECT ANSWER』

2011-05-18 20:23:37 | 映画
 前作が面白かっただけに、この続編がとても楽しみだった。2部作として最初から企画されたTV局製作の商業映画だが、娯楽大作としての矜持を守り、大作映画の王道を行くものになればいい、と期待した。それだけにこの出来の悪さには閉口する。

 大風呂敷を広げた以上、きちんと納得のいく終わらせ方をしなくては、詐欺だ。なのに、これではまるで、なんの答えにもならない映画である。どこが、パーフェクト・アンサーですか? 冗談ではない。『杜撰なお答え』と改題して欲しいくらいだ。

 ここに切り拡げられた世界は一体何だったのか、まるでわからん。「星人」とは、なんだったのか。ガンツとは何なのか? どれもこれも辻褄合わせにすらなってない状態で強引に終わる。あんまりだ。途中から、これは何がしたかったのか、と根本的なことを疑問に思う始末だ。

 前作は特撮映画の王道を行く展開でワクワクした。いったい何がここで起こっているのか、わからないことが魅力だった。前半戦としてはあれでいい。だが、解決編である本作はそれではダメだ。ちゃんと納得のいく説明を用意しなければならないし、それが結果的にさらなるドキドキワクワクにつながらなければならない。なのに、この結末は! これでは、完全に空中分解だ。地下鉄の車両内でのバトルは確かに迫力がある。だが、それがお話のほうにつながっていかない。

パート1のシンプルなストーリー展開と比較すると、今回は、とても複雑なドラマ展開を見せる。映画としては、こちらの方がダイナミックで面白いものになるはずだった。なのに、いくつもの謎をきちんとまとめあげていくこともなく、おざなりにして、勝手に全力疾走するから、途中からついていけなくなる。別にわかりやすく説明をしろ、というわけではない。ただ観客を置いてけぼりにするのはよくない、と思うのだ。観客とともにラストまで走り抜けた時、その映画にカタルシスが生じるのだ。いくつもの謎に対して、答えることもなく、ラストまで行き、強引に終わらせる。あれでハッピーエンドだなんて、とても思えない。二宮和也が自らを犠牲にして、世界を救おうとする結末はOKだが、そこに納得のいく説明が欲しい。ひとりよがりのハッピーエンドくらい酷いものはない。

 それにしても、ここまで理屈の通らない映画も珍しい。謎は深まるばかりで、その結果は放置プレイ。それってよくないだろ。だいたいGANTZって何だったのか?(あれっ、それってさっきも書いたな) GANTZの反対勢力って、なんだったのか。だいたい「星人」自身もよくわからない。それに山田孝之がひたすら間抜けだし。

 一番の疑問は、どうして小島たえ(吉高由里子)を守らなくてはならないのか?これって彼女の見た夢物語だったのか。だいたい二宮が100点貯めるより早く田口トモロヲのおやじが100点になるとか、根本的なところで、おかしいだろ。二宮がまず、本郷奏多を甦らせた意味もわからん。あいつはまるで役に立ってないし。二宮がたえを守るのは、わかるけど、他の奴らまで、賛同するのはわからない。というか、そこからメンバーが2つに別れて殺し合いするのもわからない。細かいことを書いても詮無い話だが、それやこれやが、いちいち気になるのだ。だいたい多恵(こんな漢字かなぁ)は脚が悪かったはずなのに、途中からちゃんと走ってたし。なんで?

 前作は3話からなるオムニバス・スタイルで、あんなに完結でスカッとするヒーローものだったのに、今回は星人も出てこないし、もたもたした話で、全く要領を得ない。偽加藤とか、それってなんだったのか?

 全体を、2部構成5時間の映画としてまとめることが出来ないのなら、最初から2時間なり、3時間なりの1本の映画として作るべきだった。なんでもかんでも不必要に長くして、本質を見失うのはよくない。まぁ、それは商業的な問題でしかないのかもしれないが、それでも全体をきちんとまとめきれなかったことは佐藤信介監督の責任だろう。あんなにも面白かった映画が、ここにきてここまで見事空中分解するだなんて、驚きだ。


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