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映画・演劇のレビュー

『体育館ベイビー』

2014-06-26 21:29:50 | 映画
 これは深川栄洋監督の初期作品。今のような売れっ子監督になり、時代の寵児になるなんて思いもしなかった時代の作品。『狼少女』でデビューした時は、きっとこれだけで消えるのではないか、と思った。悪い映画ではなかったけど、マニアックで、線の細い作品で、惜しいけど、無理、と思った。それが今では引く手あまたの若手作家のエースである。メジャー大作から小品まで、なんでも手掛けて、見事な作品に仕立ててしまう。商業映画なのに、それだけではないものを作る。

 これはボーイズラブを扱った作品で、ちょっとした「きわもの」。しかも、低予算の若手アイドル発掘企画。『仮面ライダー電王』でブレイクした中村優一主演の青春ラブ・ストーリー、ということらしいのだが、こういう作品を手掛けても、彼はちゃんとそこそこの作品に仕立ててしまう。

 さすがに、これを見た瞬間は、だめだな、と思ったけど、少しして、冷静に振り返ると、作品自体は端正にまとまっていて、下品じゃないし、悪くはない。1本の青春映画として、成立している。

 ただ、男同士の恋を、誰にでも納得のいくものとして提示するまでには至っていないだけ。だいたい、タイトルの「体育館ベイビー」という噂話が生かし切れていないから、このタイトルである必然性がない。題材に対する切り込みが浅い。

 でも、深川監督には偏見や、思い込みがないから、何を扱っても素直にみることの出来る作品になるのだろう。そういうところが重宝されているのではないか。まだ若いのにこれだけのキャリアを積めたのもそれゆえだ。

 3人の高校生の男の子たちの揺れる想いが描かれていく。もう少しちゃんと掘り下げて描かれたなら、よかったけど、詰めが甘いし、わざと表層的な描写に終始する。趣味の映画にしかなっていないのが惜しい。でも、こういう映画をちゃんと受けて、そこから一気に才能を開花させたのだ。そういう意味では、この映画を見て、勉強になった。なんでもえり好みせずにやれば、それは自分の糧になる、ってね。


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