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映画・演劇のレビュー

『ミルク』

2010-02-11 21:41:45 | 映画
 かって見たドキュメンタリー映画『ハーヴェィ・ミルク』と比較する必要はないはずなんだが、どうしても較べてしまう。昔、あのドキュメンタリー映画を見た時の衝撃は大きい。まだ子供だったから(と、いっても20代だったはずだが)かもしれないが、そこに描かれる出来事に圧倒された。同時に彼の生き方に興味を持った。ゲイに対する理解もなく、ただこんな人がいたんだ、という事実に圧倒されたのだ。今とは時代が違うし、考え方も変わった。ただ、あの時受けた印象が強固にあるから、今回の映画に対して、なんだか過剰に期待した。そして、ちょっと失望した。

 生々しい性描写もあるのは、さすが劇映画だ。それは当然の処理だろう。そこを避けては通れない。政治家としての活動に焦点を絞った前作と違い、今回はそれ以前の部分に多くを割くのも当然のことだろう。彼の人となりを描くためには、必要なことだ。

 だが、その結果この映画はなんだか通り一遍のものになってしまったのも事実だ。それは、仕方がないことなのだろうか。正直言うと物足りない。

 確かにお話に起伏はある。ドラマチックな展開もある。だが、見ていて、そこにはあまりドキドキしない。「カストロ通りの市長」としてゲイ・コミューンを牽引した彼の生涯を淡々と追いかけたのはいいのだが、この映画が本当に描きたかったものは何なのかが伝わりきらないのだ。ゲイに市民権を与えるための運動に命を賭けた不屈の男の伝記、ではつまらない。

 ここには驚きがない。何も知らないで見たかってのドキュメンタリー映画と、それなりのことを知った上で見る劇映画とでは、姿勢も状況も違うのは重々わかる。時代も変わった。ゲイに対して周囲の見方も変化している。だが、それだけではあるまい。この映画に対するガス・ヴァン・サント監督の視点が定まらない。ドキュメンタリータッチをねらったようだが、それだけではなんだか通り一遍でつまらない。それになんだかお上品。

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