習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『火花』

2017-11-26 21:48:45 | 映画

 

『火花』

 

こんなにも暗くて重い映画を平気で作れる。板尾創路ってやっぱり凄いと思う。これは秋の東宝映画の大作映画として、全国公開される(ミニシアターではなく、番線に拡大で掛かる!)作品なのである。なのに、全く気負うことなく自然体。一応メジャー作品なのに、遠慮はない。作者の「こうであらねばならない」という確固とした意志と自信に貫かれている。2時間全く迷いがない。

 

2002年からの10年間。ふたりの男(菅田将暉、桐谷健太)のたどった日々の記録。漫才で天下を取るために駆け抜けた時間。熱海での偶然の出会いから、今度は一緒に再び熱海にいく別れのシーンまで。芸人として、人を笑わせるプロとして、何をなすべきなのかを手探りで求める。そんな10年間の軌跡である。

 

有名になりたい、売れたいという想いは確かにある。しかし、それだけではない。20代、30代という人生に於ける一番輝いていた時代を、「何か」のために全てを擲つこと。彼らのとっては、たまたまそれが漫才だっただけ(でも、彼らにとってそれは漫才でなくてはならなかった!)で、これは(結果的に)普遍的な人の生き様についてのドラマなのだ。

 

同じような題材だったけど『漫才ギャング』とは全く違う。ここにある諦念は板尾創路という男の生きる姿勢にもつながる。誰かにわかってもらおうというのではない。自分自身を納得させるだけでいい。そのためだけに映画を作っている。実に傲慢。だけど誠実。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ねじめ正一『ナックルな三人』 | トップ | カラ/フル『カラコレ その... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。