習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『大奥』

2006-12-28 18:17:44 | 映画
 これだけの大作である。豪華な着物と、贅沢なセットを作り、大金を投じて作ったのに、ここまで中身のないバカ映画を平気で作れる無神経さには驚きを禁じ得ない。バブルの時期でもないのにここまで無駄にお金を投じたツケは誰が払うのか。

 というか、劇場にはそこそこ人が入っているようなので観客がこの映画にお金を落としていってくれるのならば、誰も損はしないということか。しかもフジテレビが半年後にはテレビ放送してそこそこ視聴率を稼ぐから、これでもそれなりに商品として、お金儲けできちゃうのかもしれないなぁ。

 それにしても、観客を舐めるのも程ほどにして欲しい。テレビのバラエティでももう少しメリハリのあるものを作っているのではないか。きちんとしたスタッフを揃え、ある程度ノーミソのある演出家であれば、ここまで酷いものにはならなかったはずだ。

 テレビディレクターなのにお客を楽しませる仕掛けすら作れないとはどういうことなのか。ストーリーがまるでないし、話自体に流れが作れてないから、単調すぎて退屈する。テレビは観客を飽きさせないように、わざと必要以上のドラマを作るものなのに、この映画はそれすらない。それは映画だから、とは言わさない。映画としてのメリハリすら作れてないのは先にも書いたとおりである。

 絵島(仲間由紀恵)という大人子供が始めて恋を知り、心ときめかしながら地獄へ落ちるという基本となるストーリー自体は悪くない。大奥総取り締役という要職にありプライドも高い女が、大奥にいるため、男とは関係すら持ったこともないまま30前になり、恋なんてものは自分とは無縁と思っていたのに、恋をする。彼女の物語として説得力のあるドラマが作れたら面白いものになったかもしれないのに、脚本も演出もまるで、わかってない。

 比較するのも、気が引けるが、よしながふみの傑作コミック『大奥』は、大胆で特異な発想もすごいが、それに足をとられることなく、しっかり、主人公たちの心の動きを見せてくれたからこそ面白かったのである。

 男たちが謎の奇病でどんどん死んでいく中、徳川幕府は国政を守るため、男に代わり女が将軍となり政治を行うこととする。その結果、大奥は男たちを囲う場となる。この設定からドラマが作られる。こんなつまらない映画を作るお金があるなら、このコミックを映画化して欲しかった。

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