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習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

誉田哲也『武士道エイティーン』

2009-10-16 20:25:43 | その他
 とうとう完結編である。でも最初からわかっていた。この小説は『シックスティーン』だけで終わっている。この作品を含むその後の2作品は読者の要望に答えただけのものだ。

 だが、香織と早苗の物語が続くのなら、絶対に見ていたい。だって、この子たちの青春はきらきらしていて、眩しいからだ。そんな高校時代を出来ることなら送りたかった。もちろん誰もが彼女たちのようにきらきらした季節を過ごしているだろう。輝いているのはこの2人だけではない。そんなことはわかっている。だが、この小説の中で、この子たちに出会った僕たちはもう彼女たちから目が離せない。

 完結編は高校3年の夏。最後のインターハイだ。2人が大阪の舞洲アリーナで戦うことになる。個人的な話だが、僕は、この夏生まれて初めてインターハイを体験した。もちろん自分が出たのではない。仕事で、大阪で開かれたバドミントンのインターハイの手伝いをしたのだが、5日間、緊張と、興奮の日々でとてもいい経験が出来た。競技進行係だったので開催期間中、ずっと本部の中央で、試合を見ることになった。特等席である。まぁ、凄まじく仕事は忙しいし、いろいろ怒られるし、大変だったが、目の前で全国レベルの頂上決戦を目撃できるなんて普通あり得ないことだろう。そこで戦う子どもたちの姿が目に焼き付いている。とても素敵な時間だった。その後、自分の学校に戻り、うちの子どもたちと練習しながら、大会の補助員をしたうちのやつらもそうだが、僕自身もなんか吹っ切れた気がした。これは雲の上の戦いではない。同じ高校生が全力で戦っているのだ。そう思うと、なんでもできる気がした。不思議なことだ。

 みんな同じ高校生である。毎日一生懸命クラブ活動に打ち込んでいる。貴重な高校生活のたくさんの時間をそこにつぎ込む。もっといろんなこともしたいはずだが、でもこれが生活の中心にあることに異論はない。自分が信じたものに、自分の青春を投じる。とても潔いことだと思う。僕はそんな子どもたちが大好きだ。

 だから、自分の人生の持ち時間のかなりの大部分をそこに注いでいる。問題はない。とても毎日は楽しい。まぁ、映画見たり、芝居見たりもたまにはしてるし、一応授業もしてるし、クラス担任もそれなりにしてるけど。

 さて、話はこの小説である。今回の特徴は、今まで通り主人公2人の話を交互に見せていくだけではなく、周囲の人たちのエピソードも短編として挟み込んでいるところにある。道場の先生や、早苗のお姉ちゃん、早苗の先生、クラブの後輩とか、である。2人を包み込む世界の一端のいくつかが突出して描かれる。2人の話自体はかなり淡泊だ。だって語るべき事はもう今までで十分描かれている。後はただ決戦に向けて、気持ちを入れていくだけである。

 インターハイ後、さらには高校卒業後までもがフォローされるが、もうそこにはもう後日談しかない。香織の大学生活が、直接は語られるわけではないし、早苗の浪人の日々が描かれるわけでもない。それはまた別のお話だからだ。

 これは悪い小説ではない。そんなことわかり切っている。だが、今更わざわざこれを読んでもここからはもう得るものは何もない。残念だけど。



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