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映画・演劇のレビュー

浪花グランドロマン『ラプソディ』

2009-09-18 22:13:59 | 演劇
 休憩10分を挟んで2部構成、2時間40分の長編である。浪花グランドロマン(NGR)の第30回公演。記念すべき節目に当たる作品である。気合が入らないはずがない。

 戦国の世を背景にした時代劇大作だ。ミツヒデ(関角直子)を主人公にして、彼の想いが全編を貫く作品となっている。ミツヒデの想いは彼の肉体が滅んでも、彼によって比叡山を焼き討ちされたテンカイ(めり)へと引き継がれていく。開かれた国作りを目指すノブナガ(高上未央)の手足となって、忠実な家臣として、働くのだが、彼を信じ切れず、苦悩する。最終的には自分の想いを遂げるために、ノブナガを殺し、自分も死んでいく。だが、彼の想いはそこで尽きるわけではない。ミツヒデの魂はテンカイの体の中に入る。(芝居の後半は、関角さんからめりさんに引き継がれる。)そして、自分の想いを遂げるために影武者であるイエヤスを操り、徳川の御代に、自らの想いを成就させる。この国を鎖国するのだ。彼は国を閉ざすことで平和を守ることに成功する。

 自分の想いに忠実であることで、この国を正しい方向に導くことが可能だと信じた彼が、最後はその思いを遂げたはすなのに、心は満たされない。

 NGRが今まで培ってきたありとあらゆるノウハウをこの1本に注ぎ込み、このド派手なエンタメ仕立ての時代劇大作を作り上げた。水も火も、当然使うし、回り舞台ありの、テントのサイドも開くし、当然正面にも開くし、そこにはなんと(鉄パイプで組み立てた)巨大な船が現れ、天女は(ワイヤーに吊られて)宙を舞う。ライトに照らされた本物の大阪城も、しっかり借景として取り入れる。

 こんなふうに書くと、ただの仕掛けだらけのエンタメのようだが、これは単純なアクションではない。芝居自体は地味な印象を残すくらいだ。あまりはしゃいではいない。ミツヒデ、テンカイと前半、後半で完全に2つに分け、2人は全編出ずっぱりになるように構成されている。メーンキャストをすべて、女性に演じさせたことで、ギラギラした暑苦しい権力争いとは、少し趣の違う、視点を微妙に外したクールなドラマになっている。ミツヒデの理想が成功したはずなのに、現実の前で挫折していくという過程が、もう少し理詰めで描かれていたならいいのだが、詰めが甘く作品としての完成度が今一歩なのが残念だが、それでもよくぞここまでやってくれた。これはこれで実に潔くあっぱれだと思う。


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